(2)人口推計のひとり歩きを防ぐため、より科学的な提示を

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まとめ

市の多くの計画で人口推計がその基礎資料として使われています。しかし、その人口推計は、ここ約7年の間に、ピーク人口は約8,400人増、ピーク期は約10年後ろにずれるなど、大幅な修正が加えられています。つまり、人口推計の算出・公表方法は見直す必要があります。しかし、国や都、市の職員に新たな発想はなく、高度経済成長期のモデルで計算を続けています。これから令和2年度国勢調査の結果を受けて人口推計が算出されます。機会を見つけ、新たな計算・公表法を提案できればと思っています。

  • 市の人口ピークは何度どう修正されたか → 約7年で2度、ピーク+10年、人口+8千人
  • 人口減少を印象付け、抑制的な施策に世論を誘導する意図がないか → 意図はない
  • 少なくとも幅を持たせ、科学的に正確な人口推計情報の提示を → 研究していく
  • 人口推計は市のさまざまな計画のベース、問題ではないか → 研究していく

初回質問・初回答弁

 小平市は、市の計画を立てる際や市民への説明をする際など、さまざまな場面で人口推計を提示している。その推計によると、小平市は5年後である令和7年に人口ピークを迎え、その後は人口が減少し続けるとされている。なお、3年前の平成29年2月の報告書においては、人口ピークは本年、令和2年に迎えると見込まれていた。しかし、市への転入者数が予想より多かったことなどから、今回、5年後に修正されている。

 一方、人口が5年後から減少に転じ、そのまま減り続けるという推計に疑問の声もある。なぜなら、今後は地方の過疎化が加速し、環境の整った都市へ移り住む人が多くなることが予想されているため、都市から適度な距離にあり、交通の便もよく、地価もそれほど高くなく、目立った災害も少なく、かつ生産緑地が急速に宅地化されている小平市のような自治体は、最適な移転先候補になるからである。実際、平成30年には、全市町村のうち、小平市の転入超過数が全国で16位になった。

 小平市が人口推計に用いているコーホート要因法では、5年間のデータをもとに次の5年間の数値を推計し、さらに、その推計で出た5年間の数値を次の5年間の推計で用いるとしており、将来的な数値がどこまで意味をもつのか不明である。また、通常、科学的な推計を行う場合、将来的な数値は、その算出に用いるパラメータの変動などから、幅(上限値、下限値等)や確率をもって示されるものだが、小平市が通常提示している人口推計は、転入、転出数といったパラメータの変動が大きいにもかかわらず、1本の線で示され、単純化され過ぎている。

 財政運営の観点からは最悪のケースに備えることが欠かせないが、経済は人々の想像力の上にある。人口が減るため、あれも諦め、これも諦めなければやっていけないといった発想を市民に浸透させることは、人々の想像力を制限し、必要以上の経済活動抑制につながるおそれがあり、慎重にならなければならない。

 そこで、小平市の人口推計について、その妥当性と提示方法について問う。

Q1. 市の人口のピークは、これまで何度、どのように修正されてきたか。

A. 市長(小林 正則) 人口推計は、これまで3回実施し、基本的に5年ごとの国勢調査の結果公表に基づき作成している。最初に平成22年国勢調査結果をもとに行った人口推計では、総人口のピークを平成27年に18万8,832人とし、次に平成27年の国勢調査結果をもとに行った人口推計では、令和2年に19万1,443人としている。昨年8月に公表した小平市人口推計報告書、平成27年国勢調査による補足版では、令和7年に19万7,231人で総人口のピークを迎えると推計している。
😩 推計値の大幅な変更が続いています

これまで公表されてきた人口推計の推移を次にまとめました。 平成24年の公表から7年2ヵ月間で、人口ピーク時期は10年後ろにずれ、ピーク人口は8,399人増える変更になっています。かなりのズレだと思います。人口推計が7年で8,000人以上も増える場合、保育所の数はすぐにどれだけ追加すればよいのでしょうか。計算方法の見直しや、幅を持たせた数値の公表などが必要です。

根拠公表時期人口ピーク
時期推計
← 前回公表
値との差
ピーク人口
推計(人)
← 前回公表
値との差
平成22年
国勢調査結果
平成24年
6月
平成27年188,832
平成27年
国勢調査結果
平成29年
12月
令和2年+5年191,443+2,611人
平成27年
国勢調査補足版
令和元年
8月
令和7年+5年197,231+5,788人

Q2. 市は、変動が大きく、一定の確率内でしか予測できないはずの人口推計を、さも確定しているかのように1本の線で示し、その人口ピークと急激に人口が減少する様子を印象づけることで、抑制的な施策が進めやすいように世論を誘導しようとする意図はないか、市の見解を伺う。

A. 市長(小林 正則) 昨年8月に補足版を公表したのは、近年の人口増加の動向が、前回、平成27年国勢調査をもとに示した推計人口のピークを上回り、なお増加の傾向が続いていることから、一定の手法に基づき新たに推計を行ったもので、世論を誘導しようとするものではない。

Q3. 複数の推計方法の結果も合わせて、少なくとも幅を持たせた、より科学的に正確な人口推計情報の提示を行うことで、上記のような経済活動抑制につながる懸念を減らせると思うが、市の見解を伺う。

A. 市長(小林 正則) 推計にあたっては、直近で観察されている出生、死亡、人口移動の状況が今後も継続すると仮定して、過去から現在に至る人口動態の傾向を将来に投影するもので、将来起こり得る社会的、経済的な変化や政策に起因する人口の動きの変化などは、推計の要素として盛り込んでいない。現時点では、複数の仮定を想定して、複数の結果を示していくことは考えていないが、令和2年国勢調査の結果を受け実施する予定の次回の人口推計に向けては、国立社会保障・人口問題研究所における日本の将来推計人口や東京都における推計の手法なども参考にしながら、引き続き推計のあり方を研究していく。

再質問・答弁

時間がないので、また今後、機会を見つけ詳しく質問したいが、1点だけ。

これまで国勢調査の結果が示される5年ごとのタイミングで実施してきた小平市の人口推計が、2回分すべて人口ピークの予想が外れていて、毎回5年ずつ後ろにシフトし、ピークの時期も約9年から10年後ろにずれて、人数は約1万人増える。

結局いまだピークは来ていない。さらに、今回推計値と実数の乖離がずいぶん大きくなったので、国勢調査の結果が出る5年目を待たずに、4年目で後ろにずらしたということ。

人口推計は市のさまざまな計画のベースになっている。保育園の数もこれを根拠にしているはずだが、さすがに外れ続けていて、このままだとまずい。9年間で1万人も増えたら、保育所をどれぐらい増やせばよいのかという話になる。本当にまずいよね、ということで、意見を伺う。

A. 行政経営担当部長(有川 知樹) 国勢調査をもとに、これまで合計3回ということでやってきた。一定の手法に基づいてやっているということで、結果的に流入する人口が予想より多かったと、端的に言うとそういう結果として現れている。

今後、令和2年の国勢調査をもとに推計を予定しているので、その際は、議員が言うような、より科学的なというところで、どういうことが可能なのかを今後研究していく。

以上