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(1)即刻中止すべきTOKYOワクションに市はどう対応するか

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まとめ

令和3年12月2日に行った3件の一般質問のうちの1件目です。

11月1日に東京都が始めたTOKYOワクションは「ワクチン接種の有無によって待遇上の差別を行うこと」を東京都として許容し推進するものです。9月定例会の一般質問でも指摘しましたが、ワクチン接種有無での差別は基本的人権の侵害という憲法違反の行為ですので、してはならないことです。

このように、ワクチンパスポートなどの方法により差別を行うことについては、埼玉弁護士会や兵庫県弁護士会からも、憲法やその他法律に違反するものであることを指摘する声明が出ています。

また、TOKYOワクションには情報セキュリティ上の重大な問題があることも指摘されており、国が示したガイドラインにも違反している疑いが濃厚です。

このように、TOKYOワクションは非常に問題の多い事業ですので、即刻中止すべきものです。小平市がこの流れにそのまま乗ってしまうことのないよう、釘を刺しておく意味もあり、質問しました。

なお、民間の事業者が、年齢や性別など「顧客の状態に応じたサービス」を提供することもありますが、それと自治体が行う事業とはまったくの別物と考える必要があります。なぜなら、私たちはそうした民間事業者に税金を払っているわけでもありませんし、通常、自由意志が影響を受ける状況にはならないからです。

小平市は現在対応の予定はないということで、ひとまず安心しました。

質問答弁
TOKYOワクションに対し、小平市は協力依頼が来ているが現在対応の予定なし
ワクチン接種・非接種の差別禁止にもっと周知啓発を今後も啓発に努める
差別禁止条例の制定予定は国と都の状況を見極めるが、都が制定する必要あり

通告書

主な質疑

以下の質疑は要約です

正確な質疑内容は会議録をご参照ください。
なお実際は理事者側の答弁すべてが敬語表現でなされています。ここでは簡略化のため敬語表現を省いています。

①質問する理由

TOKYOワクションは憲法違反行為であり、やってはいけないこと

本年11月1日に東京都がTOKYOワクションアプリの運用を開始した。これはLINEを利用して新型コロナワクチン接種者に優遇措置を行うものだ。

つまり、ワクチン接種の有無で待遇上の差別を行うことを東京都として許容し推進するものである。

9月定例会で指摘したように、ワクチン接種有無での差別は基本的人権の侵害であり、許してはならない。よって、この事業は即刻中止すべきものである。

国が今後進めるとしているワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)も同様。こうした行いはすべて憲法違反であり、やってはいけないことである。

情報セキュリティ上の重大な問題も指摘されている

また、別の問題として、LINEを使ったシステムには、情報セキュリティ上の重大な問題があり、政府のLINE利用に関するガイドラインに違反し、さらに東京都個人情報の保護に関する条例にも違反しているという指摘がある(例えばコチラのブログ記事でも詳しく解説されています)。

LINE社は、もともと韓国のオンラインゲーム会社がライブドア社を買収し、その後、ソフトバンクグループと経営統合してできた。

『LINEの個人情報管理に不備』のスクープ記事

今年の3月に朝日新聞がスクープした記事で、LINE社の、次ような大問題が発覚した。

  • 日本のLINEユーザーの個人データへのアクセス権を、中国の関連会社に付与していた
  • 日本のLINEユーザーの画像データや動画データなどの個人データすべてを、韓国の関連会社のサーバーに保管していた

朝日新聞:LINEの個人情報管理に不備 中国の委託先が接続可能(令和3年3月17日)

議員研修会のときに、そんなことないみたいな話があったと思うが、私が聞いていた話とずいぶん違う。

🤔 令和元年度議員研修で聞いた話とずいぶん違う

令和2年2月6日に行われた議員研修会で「LINEが目指す社会貢献について」という講演がありました。私は、これは非常に問題の多い講演会だったと思います。議会から依頼した形ですが、議員研修というよりは、一企業によるサービスの宣伝の場と言った方がよい内容でした(企業から宣伝を受けるのであれば、その他すべての企業に、平等に機会を与えるべきです)。

その中で、講師が「LINEの情報は海外に流れる心配はない」というような話をしていたと思います。その後、上記のような問題が発覚しました。いったい何を信用すればよいのでしょうか。

これは、

とされている。経済安全保障という概念とともに、大きな社会問題になった。

経済安全保障とは

国際社会の中で国家安全保障を確保するカギとして、経済上の手段を用いる動きが先鋭化しています。各国は、自国の優位性を確保するために機微な技術・データ・製品等の獲得に向けた動きを活発化させており、例えば、適正な活動を装って標的となる企業や大学等に接近し、目的を達成する事案等が発生しています。各国は一方で、こうした活動から国益を守るために規制や取締りを強化しており、これらの動きをまとめて「経済安全保障」と呼ぶことがあります。(公安調査庁のパンフレットより)

公安のサイト

この事件を受け、個人情報保護委員会と総務省が、4月にLINE社に対して行政指導を実施した。

国がLINEサービス等利用のガイドラインを制定

また同年の4月30日付で、内閣官房、個人情報保護委員会、金融庁、総務省が『政府機関・地方公共団体等における業務でのLINE利用状況調査を踏まえた今後のLINEサービス等の利用の際の考え方(ガイドライン)』を制定。

このガイドラインを読むと、LINEでは、原則として機密性を有する情報、住民等の個人情報を扱ってはならないとされている。

また、公式アカウントを利用した相談業務等においては、LINE社とは別の委託先に、適切にセキュリティが確保されたシステムを構築する必要があるとされている。

小平市のLINEを使った相談事業等はガイドライン違反では

小平市は大丈夫か。通告外だから今回は聞かないが、LINEを活用した相談を行っていることはガイドライン違反にならないのか。

TOKYOワクションはガイドライン違反

TOKYOワクションは、LINEを使って接種情報のやり取りする。LINE社とは別の委託先も用意していない状況なので、このガイドラインに違反しているという指摘がある。

また、東京都個人情報の保護に関する条例第4条には、「思想、信教及び信条に関する個人情報並びに社会的差別の原因となる個人情報については、収集してはならない」とある。

まさにこのワクチン接種、非接種の情報というのは、社会的差別の原因となる個人情報だ。それを収集している時点で条例違反であると、そういったことが指摘されている。

それ以外も問題は多岐にわたる。ぜひこちらのブログ記事を読んでいただきたい。

そういった情報セキュリティ上の問題がある。

基本的人権の侵害

基本的人権のひとつ重要なことは、「自らの身体、健康、生命等に関する重要な判断は、自らの自由意志に基づいて行える」というものである。

私がここで述べているのは、自由意志に基づいた判断ができなくなる差別や同調圧力を、国や東京都が容認・放任したり推進したりしてはならないということだ。

同じことが、埼玉弁護士会の声明で法律的に詳しく指摘されている

埼玉弁護士会が同10月に出した声明(「ワクチンパスポート制度によるワクチン接種の事実上の強制及びワクチン非接種者に対する差別的取扱いに反対する会長声明」)にも同様のことが詳しく書かれているので抜粋する。

このワクチン接種証明書の国内利用は、新型コロナウイルスの感染拡大を防止しつつ、国内の経済活動を回復させるという狙いがあるが、単なる公的証明という域を超えて、接種証明の提示を公営施設や公共交通機関の利用の条件とし、あるいは、民間の宿泊施設や飲食店の利用、旅行・イベント等への参加等の条件とすることを積極的に推奨するのであれば、市民は、社会生活のあらゆる場面で接種証明書の取得と提示が求められることになり、その結果、これまでワクチンの接種を望まなかった者も接種を強いられることになる。このことは、ワクチン接種を余儀なくされる者の自己決定権(憲法第13条)を侵害するものであり、他方、それでも接種しないとした者の幸福追求権(憲法第13条)や移動の自由(憲法第13条、第22条第1項)を不当に制約するものである。

また、ワクチン接種後においても新型コロナウイルスに感染する場合が報告されている状況の下、接種証明の有無によって施設の利用等に差異が生じさせることは、ワクチンの接種者と非接種者とを正当な理由なくして差別するものであって、平等権を保障した憲法第14条にも違反する。

さらに、接種証明の確認を宿泊施設や飲食店の営業主、興業主等に義務づけるようなことがあれば、当該事業者の営業の自由(憲法第22条第1項)をも侵害することとなる。

そもそも、人体に大小様々な作用を及ぼす医薬品について、それを自己の体内に取り入れるか否か、取り入れる場合に何をどのような方法によって取り入れるかといった問題は、個人の生命・身体に係る極めて重要な事項であり、したがってまた、これを自らの意思と責任に基づいて決定することは、個人の自己決定権の中核をなすものと言える。

以上のとおり、ワクチンパスポート制度の導入は、法律上の根拠を欠くことはもとより、医学的・科学的にも実証的な根拠を欠いているのであるから、同制度の導入・実施は、前述のように、憲法第13条、第14条及び第22条第1項に反し、許されない。

よって当会は、ワクチンパスポート制度により、ワクチン接種の事実上の強制やワクチン非接種者に対する差別的な取扱いが招来されることを強く懸念し、このような制度の実施に強く反対する

私はこの声明にとても同意する。職員も同意する方がかなり多いのではないか。普段から人権の大切さを訴えている人も、ぜひこれは読んでもらいたい。

兵庫県の弁護士会からも、同様の趣旨の会長声明が11月9日に出されている。

本来、国や都がやるべきなのは、情報提供と周知徹底

本来、国や自治体がやらなくてはならないことは、次のことだ。

  • 人々が自由な意志で判断が行えるよう、必要十分な情報を分かりやすく提供すること
  • 自由意志の制限につながる差別や同調圧力が起こらないよう周知啓発等を徹底すること

東京都は、こうした原則に著しく反しており、国もその誤りを犯そうとしている。

人権については(この声明文と)通告書に書いたことが中心。今までも述べているので、これ以上は述べないが、すでにこれだけでTOKYOワクションは即刻中止すべき事業ということが分かる。

事業者が顧客の状態に応じたサービスを提供することと混同してはならない

なお、事業者が、顧客の年齢や喫煙状態等に対応して個別のサービスを提供することは、多くの場合、人権侵害には当たらない。自由意志が影響を受けるようなものではないからだ。

こうした事業者が行う顧客に応じたサービスと、多大な権力を有する国や東京都が行うワクチン接種者優遇策を、混同してはならない。

東京都は機能不全を呈している

以上のように、TOKYOワクションは本当に問題が多い。こういったものを推進する東京都は最近おかしい。

9月定例会で一般質問したように、東京都はQRコード決済のポイント付与事業についても、ギャンブル性のあることを自治体にさせている。

そのせいで小平市は1.4億円も予算超過している。その問題の原因となっている事業者は、奇しくも母体が同じ企業だ。

仮に、企業のロビー活動が盛んで、それが功を奏したことで市民の福祉が第一優先に考えられていない状況になり、そういう状況の中で東京都が事業を実施しているようなことがあれば、本当によくないことだ。

東京都が機能不全に陥っている理由は分からないが、東京都の事業に乗せられることなく、小平市はとにかく市民の福祉向上を第一優先で考えて市政を運営していただきたい。

市民の福祉向上を第一優先で考えれば、TOKYOワクションなんて発想は出てこない。

地獄への道は善意で敷き詰められている

歴史が示すように、私たち人類はすぐに他人を差別してしまう生き物だ。そして最も注意すべきは、歴史的に残酷な差別や迫害の場面では、必ず「身近な人たちを守りたい」といった善意の言葉が語られていることだ。

つまり、いつの時代も、善意によって差別や迫害行為が正当化されている。「地獄への道は善意で敷き詰められている」ということわざのとおりだ。

TOKYOワクションのキャッチコピーは「新型コロナから、自分と自分の大切な人を守るために」だ。

このようにあいまいで不正確な表現を用いて、人々の善意を利用し、その裏で人権侵害の流れをつくることは、けっして許してはならないことだ。

小平市がこの流れにくみすることのないよう、質問する。

人権侵害の流れをつくり、情報セキュリティー上も重大な問題があるTOKYOワクションに小平市はどう関与するか

人権侵害の流れをつくり、情報セキュリティー上も重大な問題があるTOKYOワクションに小平市はどう関与するか。

TOKYOワクションは、東京都が実施している新型コロナウイルスワクチン接種促進キャンペーン。

ワクチン接種を進めるため、ためらっている方が接種について検討できる環境を用意し、希望する方の接種につながるよう、各種広報媒体を活用し、ワクチンの有効性や安全性など正しい知識の広報や接種の呼びかけを実施するとともに、スマートフォンアプリLINEを活用し、接種記録を登録、表示することで、ワクチンを2回接種した方に協賛企業等による各種特典を付与するもの。

キャンペーンの広報やTOKYOワクションに賛同し、特典を提供する企業、団体の募集等については、東京都がホームページ等で行っているものと認識している。

なお、11月16日付で、特典の提供について、東京都から各区市町村長に協力依頼が来ているが、現在のところ対応の予定はない。

ぜひ対応しないでいただきたい。

ワクチンの有効性や安全性の正しい周知を行っていると言うが、一方に偏った情報しかない。根拠のない情報も含まれている。果たして市民が正しい判断をできるかというと、多分できないと思う。

ワクチン接種・非接種での差別を禁止するよう、市はもっと周知啓発を徹底すべきでは

ワクチン接種・非接種での差別を禁止するよう、市はもっと周知啓発を徹底すべきではないか。

新型コロナワクチンの接種に関する差別や偏見等はあってはならないもの。市では、接種券に同封した案内通知や市報、市ホームページにおいて、差別等に関する内容を掲載しており、今後も啓発に努める。

小平市は足りていない。接種券に同封の案内通知など見たが、表現がすごく消極的。

過去数十年を見て、人権の侵害や憲法違反になるような事例が、こんなに明確な事例が出ている。そうしたことに対し、小平市が積極的に注意啓発や周知啓発を徹底しないのであれば、今後、小平市が行う人権侵害等のセミナー事業等は偽善なのだなと、私はそういうふうに今後判断し、事あるごとに指摘する。

10月27日時点で、日本の中で8県(石川県、長野県、岐阜県、三重県、和歌山県、鳥取県、徳島県、高知県)と3市(那須塩原市、大府市、明石市)で、新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種に関する差別を禁止する条例を制定している。小平市もそういうことをしてほしい。

市として、ワクチン接種に関する差別を禁止する条例を制定する考えはあるか

一応聞くが、そういった条例を、小平市でも制定する考えはあるか。

各自治体の条例については、私どもも認識している。

北日本新聞でも大きく取り上げられ、都道府県単位できちんと対応していく必要があるという記載もある。そのうえで、国に、どのような行為が差別に当たるかより具体的に示してほしいなどという要望もしているというところは、確認している。

小平市においては、この辺の状況を見極めながら考えていきたい。広い視点で考えれば、都道府県単位ということで、東京都が条例をきちんと制定をしていく必要があると認識している。

東京都の問題を今指摘したのに、東京都にしたがってやりますというのは、私が言ったことが伝わっていない。

機能不全の東京都に盲従するのではなく、小平市民の福祉向上を第一優先に考えよ

東京都はいくつかの点で機能不全に陥っている。

それをちゃんと認識し、小平市は小平市の市民の福祉の向上を第一優先に考え、東京都の意向等にもし間違いがあるのであれば指摘したり、全然違うことをやらなくてはならない。自治体として。それを認識しているか。

東京都もすべておかしいわけではないが、そういう気概を持って取り組んでもらいたい。

さもなければ、職員も、職員として仕事をしている上でのやりがいや達成感、心意気のようなところが侵食される。ぜひ抗ってもらいたいと私は思う。

以上