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(1)小平市内の事業者でできることを第一に考えよ

初回質問・初回答弁
小平市の経済活性化のためには、市内事業者が市のさまざまな事業を優先的に担える仕組みをもつことが重要だ。すでに一定の考慮がなされている入札時点だけではなく、それ以前の計画策定の段階から組み込む必要がある。経済とは利益の循環であり、市内事業者の育成にもつながるためだ。
市内事業者が市内で利益を上げた場合、利益の大半は、税金、雇用、消費、投資といった形で市に還元される。一方、市外事業者が市内で利益を上げた場合、利益の大半は市外へ流出し、市内へはほとんど還元されない。これは支店や営業所が市内にある場合であっても、本店が市外にあれば状況はほぼ同じである。
理想的には、たとえば事業計画を策定する際、総費用を見積る時、将来に渡って市内でどれだけの利益循環が見込めるかを考慮した計算することが望ましいと考える。
以上の趣旨に基づいて、直近の例を挙げながら、市の方針を問う。
Q1. 市内の事業者が優先的に市の事業に携われるように、入札で事業者選定をするより前の、事業計画策定の段階で設けられている仕組みは何かあるか。
Q2. 小平市チャレンジ企業応援事業以外に、市内の事業者を育成するための取り組みはあるか。
Q3. 一般会計補正予算(第4号)審査の答弁では、予算2.6億円のキャッシュレスポイント事業について、その経済波及効果額を次のように計算していた。
30%還元のため、予算2.6億円 × 130/30 = 11.3億円、これを総務省の経済波及効果を計算するExcelシートに入れて算出し、13.8億円。
しかし本来、経済波及効果は「新規需要分」に関するものであり、また、小平市内での効果を考えるのであれば、市外への流出分を省かなくてはならない。つまり、市内の経済波及効果額は:
予算2.6億円 × 予算消化率 × (1 - 手数料率) × 130/30 × 新規需要率 × 小平市内での使用率
といった式から算出された値をもとにするべきと考えるが、見解は。
Q4. 学校給食センターの更新事業について、入札予定価格57億円を契約期間15年、総給食数の71万食で割ると535円となり、食材費が仮に300円であれば1食あたり835円。この金額であれば小平市内の複数の配食事業者(1校当たり500食程度で8校分もしくはそれ以上の業者数)で対応できたのではないかと考え、決算特別委員会でも質問した。弁当併用外注方式であればさらに対応可能性は上がる。この事業は市内事業者育成の観点からも好機であったと考えるため、ここで再度伺う。市内の調理業者数は把握しているか。
Q5. 続いて学校給食センターの運営について、弁当併用外注方式については検討してきたか。
Q6. さまざまな事業において、計画策定の段階で、市内事業者が優先的に事業に携われる計画となるよう、市内事業者との連絡協議会等を設置してはどうか。
再質問・答弁
コロナ禍を受け「経済とは何か」を再度考えた人もいるのではないか。そんな余裕がないという人もたくさんいるだろうが。経済のことを深く考えることも政治家の役割。また、市の補正予算がおかしかったので、考えざるを得なかったこともある。
経済とは「誰かが誰かの役に立つ活動をすること」が基本。人類の歴史において、最も初期の経済を想像すると、小さな集団で、もともと自然に役割分担ができていたはず。対価を求めず「できる人が皆の役にたつことをする」ところから始まったのではないか。
ちなみに、学校では、経済は「物々交換」から始まったと習った。おもしろいことに、最近はこれを否定する学説が主流のようだ。物々交換で経済が成り立っていた証拠は見つかっていないらしい。信用で成り立っていたという別の学説が主流だとか。

歴史で何が正しいかは分からないが、とにかく現在は貨幣経済。その中で、なにが多くの人にとってよいことなのかを考える。フィールド、プレイヤー、ルールから考える。フィールドは自治体。プレイヤーは主に、人(ひと)、物(もの)、金(かね)の三者。これら三者のうち、自治体を越えて移動するものもあるし、自治体の中にとどまるものもある。


もうひとつ重要なプレイヤーは、地方政府。これは自治体の領域内にあって、外に出ることはない。地方政府としてのたとえば小平市は、小平市内において、個人市民税、固定資産税・都市計画税、法人市民税といった税金を徴収し、また、領域外である国や都から交付金等を得る。それらを原資にすることで、市内の福祉を充実させるというのが、地方政府である小平市のひとつ重要な役割。

税金についてもう少し考えてみる。法人市民税(法人住民税)は市内事業者の所得にかかる税金で、個人市民税と固定資産税・都市計画税の合計に対し、12分の1くらいの規模。令和元年度決算では、固定資産税と都市計画税の合計が約145億、個人市民税約141億、法人市民税約24億。
法人市民税の金額が比較的低いからといって「市内事業者の経済に関する貢献が少ない」と結論づけてはならない。なぜなら、法人市民税は事業者の所得にかかる。所得は、簡単にいえば、売上から経費や控除を除いた部分で、次のようなものが含まれる。
- 市内の従業員に支払う賃金
- 市内で材料などの購入にかかる費用
- 経営者が市内で消費活動に使う分
つまり、市内事業者の活動が市内の経済をどんなによくしていても、法人市民税には表れない。経済活動の状況は、賃金にかかる個人市民税や、家賃を介して固定資産税の方に出てくる。

市内事業者が利益を上げ、また新規に育つことで、法人市民税だけじゃなく、ほかのさまざまな税金の形としても小平市にお金が入る。このお金を回すことで、市内の福祉が充実する。税金の面からはそういう循環構造がある。
また、市内事業者が強くなれば、多くの人が市内で働くことができる。たとえば子どものいる市民が領域の外に出て働く必要がなくなり、通勤時間が短縮され長時間保育の必要性が下がる。障害者や高齢者も身近な場所で働く機会が増える。朝・昼・夕食を食べ、飲み会をするのも市内になる。日常生活にかかるお金が市内に落ちる。働く場所が地域にあれば、地域のコミュニティ活動も促進される。よいことずくめだ。
再度視点を上の方に戻してみる。人、物、金は自由に自治体とほかの自治体の間を移動できるが、市内事業者のほとんどは移動しない。移動しないところに人が集まり、モノとカネがその近くで回ることになる。つまり、市内事業者は、森の木々のような役割を果たすことで、生態系である人、物、金が回転し、豊かな経済圏が育くまれる。

その逆に、市内ではなく外部の事業者に利益が流れるようになると、カネがそこにとどまらず外へ出ていく、税金は少なくなって福祉の質が下がり、市民が転出する。モノも集まらなくなって、どんどん悪いサイクルが回り、生態系は育まれず、そのうち木も枯れてしまう。
安いからとか、技術力があるからといった理由で外部の事業者に依存していると、そういう意味での、経済圏としての生態系が貧弱になる。また、大資本による寡占化も進む。地域の事業者の参加する余地がなくなってくる。雇用の場所は限られ、多様性も損なわれてくる。
しかし、落ち着いて考えてみると、寡占化が進んだとしてもそれで市民がよいということであればよい。大資本や政府による寡占化を極端なまでに進めれば、エネルギー消費の観点からは最も効率がよい。
しかし、私は、いわゆるビックテックなどの限られた人々に富が集中する仕組みを前提にした寡占化は、(人類の理想では)ないと思う。
外部の事業者に委託する際、支店が市内にある事業者であっても、本店が市外にあれば状況は同じです。なぜなら、法人住民税の法人税割の部分が、法人全体の所得を分割基準(主に従業員数)により按分した分にかかる、という方法になっているからです。
たとえば、市内の支店に従業員が1人、本店に99人いる場合を考えてみると、市内で利益を上げ、100万円の法人住民税が発生したとしても、市に入るのはそのうち約1万円程度になります。
(今回のキャッシュレスキャンペーンのように、ほかの自治体でもポイント分が使えるとなれば、市の税金がそれだけ外部に流れ出すこととなる)
理想的には、市内でのみ有効な流通通貨があるとよいように思う。自治体の領域外に出ていかない通貨。地域商品券はそのひとつ。もっと考え方を進め、たとえば市が行う事業の支払いの一部を市内の流通通貨にしてみるなどの社会実験をしてもよいと思う。
今までの話をまとめると、昔話にある舌切り雀のつづら。大きいつづらの方として「安い、技術力が高い」といった、見た目がよいものを選んでいると、実は市外にお金が流れていく流れになり、長期的な市の発展にはつながらない。小さいつづらの方として「少し高い、技術力はもう少し」といったものを選ぶと、実は、市内の経済発展につながって、長期的には市を豊かにする。
計画策定の段階から、大きいつづら、小さいつづら、どちらになるかを確認して計画しているのかを確認したくて質問している。

Q. たとえば、事業計画策定の際、AプランとBプランが発想できたとする。単純な計算で、Aプランは100万円、Bプランは150万円のコストがかかるとする。特に考えなければAプランで行こうとなる。しかし市内還元分まで考えると、Aプランは20万円戻ってくる、Bプランは100万円戻ってくるとなった場合、実質的にはそれぞれは80万円50万円のコストになる。だったらBプランの方で計画を策定しましょう、そういういう風に、小さなつづらを選ぶための検討をする必要はないのか。
プラン | 単純費用 | 市内還元 | 実質的コスト | つづら |
---|---|---|---|---|
A | 100万円 | 20万円 | 80万円 | 大きい方 |
B | 150万円 | 100万円 | 50万円 | 小さい方 |
津嶋部長が述べたのは、地方自治法第2条第14項のことで、次のように書かれています。
地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。
これは「単に一番安いものを選べ」という意味ではありません。しかし条文解釈の問題から、職員には「一番安いものを選んでおけば大丈夫」というバイアスが働いてしまいます。この問題は、たとえばこちらの論文などでも、入札に絡んだ問題として指摘されています。
私はさらに一歩進んで、「入札より前の計画策定の段階」で、「市内に還元する利益を最大化する」仕組みを作れ、という趣旨にて質問しています。入札の時点と違い、計画の時点ではブラックボックスが許されるところもあるからです。具体的にはどうするかを、給食センターの例を挙げて説明しています。
Q. 育成という面も重要。ゼロから育成は大変だが、あと少し技術力があれば、ノウハウがあれば、実績があれば、という業者が結構あるのではないか。ノウハウを情報で提供したり、あと一押しというところのサポートはしているか。
(計画策定の段階で検討が足りていないことについて)、直近でいうと、キャッシュレスポイント事業は最たる例。事業自体はよいが。 経済波及効果の計算が間違えていると、何度も指摘してきた。余語さんを責めているわけではない。
Q. 経済波及効果の計算式自体、(上記の因数分解をした)考え方で合っていると認識でよいか。
事前の確認では「計算は間違えていた、経済波及効果の計算には、普段使う分は含まない。おっしゃる計算方法が正しい」と言っていました。このあたりの答弁、まぁ仕方ないですね・・・。
なぜビシッと言えないのか分からないが。誰も「予算消化率、新規需要率を正確に出せる」とは思っていない。ただ、ある程度の推測はできる。たとえば次のように。
- 現時点で得られるリアルタイムな情報から「予算消化率」を推定
- 昼間人口、夜間人口、小平市内の滞在割合から「小平市内での使用率」を推定
Q. そういう見積りを立てることで、どの因子をどうやって上げようかと、要因ごとに因数分解し、個別具体の対応ができる。どう考えるか。
具体的な計算式があって、推計をどう行っているかも分かれば、我々も納得できる。「総務省の経済波及効果を計算する式に入れて算出した」と言われると、不信感がわく。むしろ細かく具体的に示した方がよい。
Q. プレミアム商品券については、こうした経済波及効果額の計算は行ったか。
Q. ほかの事業も同様。事業策定の段階で、こうした因数分解を行い、それぞれのプリミティブな要因を分析し、はたしてそれが大きなつづらなのか、小さなつづらなのか、多くの人が納得できる形で示していくべきではないか。
余語さんに考えてくださいと言っているわけではなく、市の事業全体の話。因数分解できることは多い。大きなつづら、小さなつづらの検討ができる仕組みを入れていく必要がある。
学校給食センターの事業についても同様。「弁当を持たせたい」と考えている家庭もあるため、弁当併用外注方式にすれば、給食の数を減らすことができる。数が減れば、市内事業者でも対応できる、となる。 学校給食センターではひとつのプランしかない。大きなつづらも、小さなつづらもない。それはあまりにもお粗末。
計画策定の段階で複数プランがでることは重要。職員の方は自分で事業をした経験がある人は少ない。事業を行い、まちで稼いでいる人たちはアイデアが豊富。たとえば、次のようなアイデアもある。
小平駅の南口にある自転車駐車場が撤去される。その跡地に、アーケードのようなものを作り、小平駅から西友までつながるような、雨が降っても傘を差さず歩いていける屋根を作り、そこに期間限定的にでも小規模店舗を入れることで活性化していってはどうか。北口の再開発が行われることにより、南口が元気をなくしていく状況も緩和できるのではないか。
小平駅の中、改札を入ったところにちょっとしたスペースがある。西武鉄道と協議し、市民の方々で、たとえばクッキーを焼くのが上手な方などが、安く試験的に出店できるような場を設ける。
Q. このように、事業者から「こういう事業をやればよい」とか、「ここがなくなるなら、代わりにこういうことをやればよい」といったアイデアを受け止めるような場面はあるのか。
具体的な案を活用しないといけない。うちができると言うと利益誘導になるが「こういう形で小平市内の事業者で対応できるのではないか」と。
Q. 連絡協議会がコストもかからずよいと思うが、再度意見を伺う。
余語さん、津嶋さんの答弁では、結局そうなる。最終的に決めるのは市長。
今回の一般質問で「市長にやってほしいこと」を松岡議員が挙げていたが、私は、そんなにすべてできる人はスーパーマンしかいないと思うところもある。
私が考える市長の一番大事な仕事は「すべての責任は自分にあるということを示すこと」だと考えている。
次に市長になる方がここにいるか分からないが、なるべく積極的に自分で発信してもらうこと、市長が答えるべきことも部長が答えてしまうようだと、部長は責任を終えない。 市長が常に前にでて、私が責任を取るという態度を見せてもらいたかった。また、もっと市長と討論したかった。
以上