ひとり親家庭の実態調査とホームページの充実を

厚生委員会の政策提言について、私からは、ひとり親家庭の実態調査と、関連した市ホームページの充実を提案しました。しかし、特に議論なく終わってしまいましたので、ここでまとめたことは、一般質問等で訴えていきます。(実際に質問しました・令和3年6月定例会での質問

詳細は会議録をご参照ください。

*8月26日に資料提出後、ホームページやガイドブックに関して指摘した事項は、市の方で対応し、すでに修正されたものもあります。


厚生委員会政策提言調査:ひとり親家庭について

~実態調査とホームページの充実を~

令和2年10月29日
小平市議会 厚生委員会 委員 安竹洋平

1. 概要

政策提言の一環として、ひとり親家庭を取り巻く市の状況等について調査を行い、提案を行う。

市の子ども家庭部は、小平市内のひとり親世帯総数について数字を持ち合わせていないとしており、児童扶養手当と児童育成手当の申請者数に基づいた施策を行っている。この方法は大枠としてのサポートを提供する意味で一定の根拠があるものの、たとえば次のような事項に関しては不明なままである。

  • 低所得世帯もしくは多子世帯の状況や個別の課題を的確に把握できているか
  • ひとり親になった方がすぐ必要なサポートに到達できているか
  • 低所得ではないひとり親世帯へのサポートができているか

子ども家庭部によれば、必ず毎年1回は(児童扶養手当と児童育成手当の申請者である)ひとり親の保護者と面談を行い、情報を得ているとのことである。しかし、面談では相談しづらく、匿名でのみ回答してもらえるような問題も数多くある。市の福祉を充実するためには、ほかの地方公共団体が行っているように、匿名アンケートによる実態調査を行うことがひとつよい方法であると考える。

また、ひとり親家庭にどのようなサポートが用意されているかについて、市のホームページに情報が包括的に提供されておらず、配布しているパンフレット等の内容と一貫性がない部分もあるため、利用者の便宜上、改善が必要である。 以上のことについてまとめ、厚生委員会として市に協力できる案を2点、最後に記した。

2. 定義

「ひとり親家庭」とは、次のいずれかに該当する方が20歳未満の子どもを扶養している家庭のこと。 配偶者が死亡 / 配偶者と離婚 / 配偶者の生死が不明 / 配偶者から遺棄されている / 配偶者が外国にいるか、拘禁されているため、その扶養を受けられない / 配偶者が精神または身体の障がいにより働けないため、その扶養を受けられない / 結婚によらないで母(父)となった

3. 全国のひとり親世帯数割合から、小平市の世帯数推計の妥当性を見る

厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によれば、下表のとおり、世帯数は全国で合計約140万世帯あり、うち87%を母子世帯が占めている。平成27年の国勢調査結果によると全国の世帯数は5,340万3千世帯あるため、全世帯の約2.7%が、ひとり親世帯ということになる。母子もしくは父子のみの世帯では1.6%となる。

小平市の世帯数約9万2千世帯に2.7%をかけると約2,500世帯がひとり親家庭であり、母子または父子のみでは約1,500世帯になる。小平市の児童育成手当受給世帯数の約1,500件については、まずオーダーとして一定の根拠がある数値となっていることが分かる。

表1:全国のひとり親世帯数と平均年収
(平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告)
母子世帯父子世帯
世帯数123.2万18.7万
うち母子または父子のみの世帯数75万8万
61%43%
ひとり親になった理由離婚 79.5%離婚 75.6%
死別 8.0%死別 19.0%
就業状況81.80%85.40%
うち正規の職員・従業員44.20%68.20%
うち自営業3.40%18.20%
うちパート・アルバイト等43.80%6.40%
平均年間収入(母または父自身の収入)243万円420万円
平均年間就労収入(母または父自身の収入)200万円398万円
平均年間収入(世帯全員)348万円573万円

また、小平市における児童扶養手当と児童育成手当の所得制限は下表のとおり。

表2:児童扶養手当の所得制限
扶養親族等の人数全部支給一部支給配偶者・扶養義務者
所得制限限度額所得制限限度額所得制限限度額
0人49万円192万円236万円
1人87万円230万円274万円
2人125万円268万円312万円
3人163万円306万円350万円
4人以上1人増すごとに
38万円を加算
表3:児童育成手当の所得制限
扶養親族等の数所得制限限度額
0人3,604,000円
1人3,984,000円
2人4,364,000円
3人4,744,000円
4人以上1人増すごとに38万円を加算

これらの手当を該当者全員が申請していると仮定すれば、たとえば扶養親族が0人の世帯で所得約360万円以下の世帯について、市はその存在を把握していることになる。逆に扶養親族が0人で所得約360万円を超えるひとり親世帯については、この方法だけでは把握できない。つまり、先ほど述べた2,500世帯、1,500世帯からの換算からすれば、大雑把に見積って1,000世帯程度は(所得が比較的高いため)ひとり親家庭であることを把握できていない可能性がある。ひとり親世帯が抱える課題は経済的な問題だけではないため、所得が比較的多いからといって見過ごしてよいものではない。

4. 小平市が提供/情報提供しているひとり親世帯へのサポート

次に、小平市がサービスを提供、もしくは情報を提供している、ひとり親世帯へのサポートを調査し、精神面、経済面、生活面、周知で分類した。*印については、小平市ホームページの「ひとり親の方への支援」カテゴリ内に掲載がある場合は〇とした。主な項目は「ひとり親家庭応援ガイドブック(令和元年度版)」からピックアップしたものだが、市ホームページの同カテゴリには掲載がない情報が散見される。

A) 精神面でのサポート(相談)

表4:ひとり親家庭ガイドブックと、ホームページ掲載項目(*)の比較
項目
ひとり親相談
女性相談室
子ども家庭支援センター
教育相談室
就学相談
市民無料相談
民生委員児童委員・主任児童委員
こだいら就職情報室生活相談支援センター
東京都ひとり親家庭支援センターはあと
養育費相談支援センター
東京ウィメンズプラザ
東京都女性相談センター多摩支部
公益社団法人家庭問題情報センター

B) 経済面でのサポート

表5:ひとり親家庭ガイドブックと、ホームページ掲載項目(*)の比較
分類項目
給付金

貸付
ひとり親家庭* 自立支援教育訓練促進給付金(*市HPでは「母子家庭及び父子家庭」)
ひとり親家庭 高等学校卒業程度認定試験 合格支援金
ひとり親家庭* 高等職業訓練促進給付金(*市HPでは「母子家庭及び父子家庭」)
ひとり親家庭 高等職業訓練促進資金貸付(*市HPに情報なし)
母子・父子・女性福祉資金の貸付
生活福祉資金貸付
総合支援資金貸付
生活保護
住居確保給付金
都営住宅
厚労省 ひとり親世帯臨時特別給付金
手当

医療費助成
児童扶養手当
児童育成手当
児童手当
ひとり親家庭医療費助成制度(マル親医療証)
乳幼児医療費助成制度
義務教育就学医療費助成制度
遺族基礎年金
遺族厚生(共済)年金
子どもの
学費
就学援助等
受験生チャレンジ支援貸付
高校進学時の貸付・奨学金等
大学、専門学校等進学時の貸付・奨学金等
割引

減免制度
所得税、住民税の軽減(*市HPには所得税の記載がない)
市民税・都民税の軽減
国民年金保険料の免除・納付猶予
水道・下水道料金の減免
家庭ごみ指定収集袋の交付
粗大ごみ手数料の減免
学童クラブ費の減額・免除
JR通勤定期乗車券の割引
都営交通の無料乗車券

C) 生活面でのサポート

表6:ひとり親家庭ガイドブックと、ホームページ掲載項目(*)の比較
分類項目
保育

家庭
サービス
ひとり親家庭ホームヘルプサービス
保育園
東京都認証保育所・認定家庭福祉員
一時預かり事業
病児・病後児保育
ファミリー・サポート・センター
子どもショートステイ
学びの
支援
子どもの学習支援(個別学習教室)
高卒認定試験合格支援給付金
就労関係
機関一覧
小平市子育て支援課 相談支援担当
東京都ひとり親家庭支援センターはあと飯田橋
ハローワーク立川
マザーズハローワーク立川
こだいら就職情報室
北口駅前JOBぷらっと(旧立川ワークプラザ)
東京しごとセンター多摩
母子及び父子家庭 就労支援事業(自立支援プログラム)

D) 周知

表6:ひとり親家庭ガイドブックと、ホームページ掲載項目(*)の比較
分類項目
ガイドブックひとり親家庭応援ガイドブック
こだいら子育てガイド
市HP「ひとり親の方への支援」カテゴリ

5. 課題

ひとり親家庭の実態が正しく把握できているか

ひとり親家庭に対する市のサポートに関しては、以下のような疑問点と懸念事項がある。

  • 児童扶養手当・児童育成手当等の該当者は本当に全員が申請できているのか(世帯の収入を把握していない/把握できないために、申請をしていない世帯はないか)
  • 多子世帯の状況や課題を個別に把握しているか
  • 低所得世帯の状況や課題を個別に把握しているか
  • 低所得ではないひとり親家庭の実態と課題は把握できているか
  • ひとり親になった方がすぐ必要なサポートにたどり着けているか
  • ひとり親になって転居する際、契約、転居費用等のサポートは必要ないか
  • 生活保護申請世帯など、部署横断的に必要な情報のやりとりは行われているか
  • 市が提供するサポートに関して周知は足りているか
  • 上記した各サポートは有効に機能しているのか

これらのことを把握するためには、やはりまず実態調査が必要である。

ホームページでの包括的な情報提供が不足している

市のホームページにはひとり親家庭に関する特設ページがあるわけではなく、通常のリンクの中で「ひとり親の方への支援」カテゴリが用意されている。複数のリンクをたどることで、それぞれのページにアクセスできるようになっている。しかしこのカテゴリには、4で記載したように、情報が網羅されていない。また、全体が一目で分かるように構成されていない。さらに「ひとり親家庭応援ガイドブック」に掲載されている事業名と異なった名称で掲載されているものもあり、利用者に一貫した情報が提供されていないという問題がある。

6. ほかの地方公共団体における、ひとり親家庭実態調査

独自にひとり親家庭の実態調査を行っている地方公共団体は複数あり、厚労省の調査や、想像だけでは得られない情報が多々得られている。たとえば野田市の例では、さまざまなサポートが用意されていることを「知らない」と回答している人の割合が、サポート項目ごとに軒並み50%を超えている。

独自の実態調査を行っている地方公共団体の例:

  • 調布市「ひとり親家庭等アンケート調査」(令和2年8月)
  • 多摩市「子ども・子育て支援に関するニーズ調査」(平成30年10月・対象:ひとり親保護者600件、ひとり親中高生352件)
  • 武蔵野市「ひとり親家庭アンケート調査」(平成31年3月・対象:657世帯)
  • 練馬区「ひとり親家庭ニーズ調査」(平成28年7月・対象:5977世帯)
  • 足立区「ひとり親家庭実態調査」(平成28年12月・約2000世帯)
  • 杉並区「ひとり親家庭実態調査」(令和2年8月・2000世帯)
    等。

(注:上記の例はざっとインターネットで調べた限りのため、まったく網羅していません)

7. 政策提言の一環として

以上、福祉の充実を目指して、ひとり親家庭に対するサポートを再考すると、厚生委員会として市に協力できることがいくつかある。そのうち、コストもかからない方法として、たとえば次の2点が上げられる。

A) 「小平版ひとり親家庭実態調査(アンケート調査)」の実施に向けて、他市の実態調査状況をまとめるなどし、質問事項の項目等を提案する。

なお、子ども家庭部は、(児童扶養手当と児童育成手当の申請者である)ひとり親保護者と毎年必ず1回は面談を行っているとのことなので、匿名アンケート調査用紙はその面談の際に直接手渡してもらえばよい。そうすることで発送のコストは抑えられ、単に郵送した場合より多くの回答も期待できる。調査結果はほかの地方公共団体にも有益な情報となるはずである。また、児童扶養手当と児童育成手当の申請者「以外」のひとり親へのアンケート調査はこの方法ではできないため、市報等にお知らせを掲載するなど、何らかの手法で別途行う必要がある。

B) 市ホームページに「ひとり親家庭の特設ページ」を設けるなど、包括的に市民に分かりやすい情報を提供するよう改善に向けた提案を行う。その際には内容を「ひとり親家庭応援ガイドブック」と統一するなど、情報提供に一貫性を持たせるようにする。

以上