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AccessReading
通常、デイジー図書やデイジー教科書には「人の声」が録音されており、小学生にも聞き取りやすく作られています。しかし録音データや同期用データの作成には手間がかかるため、新しい図書や教材にはすぐ対応できません。また、普段授業で配られるプリントや試験問題などをすべてデイジー文書化して配るということは、ほぼ不可能に近い状況です。
そこで、録音音声ではなく、リアルタイムの音声合成処理によってデジタル文書を読み上げるという手法があります。タブレットやノートPCに、リアルタイム音声合成処理が可能なソフトをインストールしておき、そこにwordやPDFで書かれた文書を読み込ませるという方法です。しかしこの手法にも課題があります。合成音声の品質にまだ改善の余地があるため、アクセントやイントネーション、漢字の正確な読みに関して課題があることです。特に学習初期の小学生には勧められるものではありません。それでも、中学生以降になれば、ある程度の類推ができるようになるため活用可能とも考えられます。
東京大学先端科学技術研究センターが提供するAccessReadingは、合成音声による読み上げが可能な教材を提供する、オンライン図書館です。Microsoft Word形式(docx)とEPUB形式で教材の電子データを提供しており、Wordに音声読み上げのアドオン(アドインとも言います)機能を追加したり、Apple Books(Apple社のアプリ・旧称iBooks、iPadやiPhoneに無料インストール可能)を使うことにより再生が可能です。
なお、これらのソフトを使えば、通常の電子文書でも音声読み上げは可能です。ただし、ファイル形式や文書レイアウトの問題からうまく読み上げが行われなかったり、漢字の読みも間違えたりします。AccessReadingは、そういった問題の少ない、最適化された教材を提供しているようです。また、紙でしか提供されていない教科書などについても、最適化された電子書籍に作り替えて提供しているようです。
合成音声を使用したリアルタイム文書読み上げの方式は、今後AIの発達による合成音声の品質上昇とともに、活躍の場が広がっていくと思います。
Microsft Word(Windows版)に対応したアドオン
■ WordTalker
通常は有償のアドオンソフト。提供元の好意によりAccessReading個人ユーザーは申請することでAccessReading Editionが利用可能になる。
■ 和太鼓 Wordaico
無料の読み上げアドオンソフト。
EPUB形式に対応したアプリ
■ Apple Books
Apple社製品(Mac, iPhone, iPad等)に対応したEPUB読み上げソフト。MacOSやiOSに無料で付属する。旧称iBooks。すべてのEPUBに対応しているわけではない。
特長
- どんな資料でも再生ソフトに対応したデータ形式であれば読み上げられる
- データ作成の手間が低く、他の児童生徒に配る資料データをそのまま流用できるため、プリント等も活用できる
課題
- 漢字の読みを間違える可能性がある(?)
- 正確なアクセント・イントネーションが再現できていない
漢字の読み間違えに関しては、文書としてはルビを振ることで対応可能ですが、再生ソフトの方が対応しているかは不明です。正確なアクセント・イントネーションができない問題に関しては、WindowsやAppleの合成音声ソフトウェアがまだ未熟なためです。長く聞いていると疲れてしまったり、授業中にそちらの方が気になってしまい、授業に集中できないケースもあるようです。しかしこの問題は時間と共に解決するものと思われます。
将来的にはこの方式が理想形か
深層学習の発達により、音声合成もレベルが上がり、自然に聞こえるようになってきました。データ作成に手間がかからないことや、既存の図書・教材が活用できることから、この方式が今後主流になると思われます。