自閉症・情緒障害特別支援学級(情緒固定級)とは
自閉症・情緒障害特別支援学級についての分かりやすい説明資料は、たとえば次のようなものがあります。
より詳しいことについて、自分なりに調べてざっくりとまとめてみました。
1. 法の裏付け
Section titled “1. 法の裏付け”自閉症・情緒障害特別支援学級の設置根拠となっている法律は次のとおりです。
学校教育法(と学校教育法施行規則第137条)では、「特別支援学級は、原則として一から六の区分に該当するもののみ設置できる」とされています。自閉症・情緒障害特別支援学級は、このうち「六」の区分に該当します。
学校教育法(第8章・特別支援教育)第81条
2 小学校、中学校、高等学校及び中等教育学校には、次の各号のいずれかに該当する児童及び生徒のために、特別支援学級を置くことができる。
一 知的障害者
二 肢体不自由者
三 身体虚弱者
四 弱視者
五 難聴者
六 その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの
また、学校教育法施行規則では、自閉症者と情緒障害者が明確に区分けされ、それぞれに特別の教育課程を設けることができることになっています。
小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校において、次の各号のいずれかに該当する児童又は生徒(特別支援学級の児童及び生徒を除く。)のうち当該障害に応じた特別の指導を行う必要があるものを教育する場合には、文部科学大臣が別に定めるところにより、(略)、特別の教育課程によることができる。
一 言語障害者 二 自閉症者 三 情緒障害者 四 弱視者 五 難聴者 六 学習障害者 七 注意欠陥多動性障害者 八 その他障害のある者で、この条の規定により特別の教育課程による教育を行うことが適当なもの
2. 自閉症と情緒障害の違い
Section titled “2. 自閉症と情緒障害の違い”自閉症と情緒障害の違いについて、ざっと調べた限りでは、たとえば次のようなレポートが出てきます。
このレポートによると、
学校現場で問題となっている「発達障害」の多くが、「情緒的障害」であり、『自閉症』とは区別されるものである
とされています。また、医学的な診断をつける際の基準となるICD-10では、次のように分類されている、としてます。
| ICD-10での分類 | 専門用語 | 通称など |
|---|---|---|
| F7 知的障害 | 精神発達遅滞 | 知的障害 |
| F8 心理的発達の障害 | 広汎性発達障害 | 自閉症、アスペルガーなど |
| ↑ | 学習障害 | — |
| F9 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害 | 愛着性障害や強迫性障害 | 情緒障害 |
このうち、F8とF9の診断がつく児童・生徒が、自閉症・情緒障害特別支援学級での指導対象と判断される可能性があると思われます。
3. 知的障害は対象外
Section titled “3. 知的障害は対象外”また、東京都教育委員会では、知的障害のある児童・生徒は、自閉症・情緒障害特別支援学級での指導対象ではないとしています。
東京都教育委員会は、⾃閉症・情緒障害特別⽀援学級の対象は知的障害のない⾃閉症等の児童・⽣徒としています。
4. 全国の設置・通級状況(令和2年度・当時の調査)
Section titled “4. 全国の設置・通級状況(令和2年度・当時の調査)”次に、全国でどれくらいの自治体が自閉症・情緒障害特別支援学級を設置していて、どれくらいの児童・生徒が実際に通っているかを見るため、都道府県別の「設置されている学級数の割合」と、「通っている児童・生徒数の割合」を調べました。
4-1. 小学校
Section titled “4-1. 小学校”学級数の割合
各都道府県で「学級数の総数に対し、どれくらいの割合で自閉症・情緒障害特別支援学級が設置されているか」をプロットしてみます。
驚くべきことに、**東京都は全国で最低の0.5%**です。東京都以外のほとんどの自治体は、設置割合が約5%以上で、9%を超える自治体も11あります。
児童数の割合
各都道府県で「自閉症・情緒障害特別支援学級に通う児童はどれくらいいるかの割合」をプロットしてみます。
なお、この割合が「同学級での指導対象となる児童の存在割合」に近いほど好ましい状況だと思います。
トップの岡山は4.1%です。**東京都は、ほかの自治体よりも1桁以上低い0.1%**です。
なお、平成14年と平成24年に文部科学省が行った大規模な調査では、「学習面か行動面で著しい困難を示す児童・生徒の割合」は約6%でした(ただし、この調査方法には課題があるため、6%も最低値と捉えるべきものです)。この約6%が、ひとつの目標値になるのではないでしょうか。
なぜ東京都は最低位なのか
なぜ東京都は、設置割合も通う児童数の割合も、全国で最低位なのでしょうか。考えられる原因として「知的障害特別支援学級に肩代わりをさせているのではないか」というものがあります。
しかし、知的障害特別支援学級に通う児童数の割合も東京都は低位にあります。ということは、「知的障害特別支援学級がすべて肩代わりをしているわけではない」と言えるようにも思います。ただし、さまざまな保護者からの声を伺うと、「知的な障害がないにもかかわらず、自閉症・情緒障害特別支援学級がないために、やむを得ず知的障害特別支援学級に通っている」という実態もあるようです。
次に考えられるのは、「東京都は、通級(特別支援教室)に、自閉症・情緒障害特別支援学級の役割を担わせているのではないか」ということです。通級に通う児童数の割合を見ると、東京都は2位の約4%となり、 「東京都は、自閉症・情緒障害特別支援学級が担う役割を、通級(特別支援教室)に担わせているようだ」 ということになります。
小平市が、答弁で「特別支援教室の実施状況を踏まえつつ」としていることからも、その様子が伺えます。
全体として、東京だけ極端に「通級に偏っている」ことが分かります。
4-2. 中学校
Section titled “4-2. 中学校”中学校についても同じデータを見てみます。自閉症・情緒障害特別支援学級の設置割合と通う生徒の割合は、小学校と同様に最低位です。
中学校も、小学校と同様に「通級に偏っている」ことが分かります。
4-3. 東京都が通級に偏重している理由
Section titled “4-3. 東京都が通級に偏重している理由”東京都に自閉症・情緒障害特別支援学級が極端に少なく、通級に偏っている理由は、平成22年に立てられた『東京都特別支援教育推進計画・第三次実施計画』に記載されています。
現在、都における発達障害の児童・生徒に対する教育的な支援は、主として情緒障害等通級指導学級において行われており、自閉症・情緒障害学級(固定学級)の設置はあまり進んでいません。これは、都教育委員会が、関係法令改正以前の情緒障害者(当時)の教育については、「原則として通級指導によって対応する」という方針を従前より示してきたことによるものです。そのため、小・中学校における自閉症・情緒障害学級の教育課程についても、実践研究の積み重ねはいまだ十分とは言えません。
この計画は10年以上前に立てられているわけですが、その時点で、すでに次のような指摘もなされています。
通級指導学級の場合、国の通知(「学校教育法施行規則の一部改正等について」平成18年3月31日付17文科初第1177号)により、指導時数は年間280単位時間(週8単位時間)までとすることが定められています。
しかしながら、発達障害の児童・生徒の中には、通級による指導では学習や生活上の困難の改善が難しいと思われる児童・生徒がおり、そうした児童・生徒がやむを得ず小・中学校の知的障害特別支援学級に入級したり、都立知的障害特別支援学校の小・中学部に就学するといった現状があることも報告されています。小・中学校の知的障害特別支援学級や都立知的障害特別支援学校の在籍者の増加には、こうした児童・生徒のための教育の場が十分に整備されていないことも影響しているものと推測されます。
こうした状況を踏まえ、「重層的な支援体制」の整備に当たっては、各区市町村が地域の実情に応じて、自閉症・情緒障害学級の計画的な設置を進めることにより、特別支援教室や通級指導学級では障害による学習又は生活上の困難の改善が難しいと思われる児童・生徒に対する教育的な支援の充実を図ります。
10年以上も前に実施計画で問題が指摘されているにもかかわらず、いまだに東京都が特別支援教室に極端に偏っている状況には驚きます。
また、平成29年に立てられた、『東京都特別支援教育推進計画(第二期)第一次実施計画』にも、次のような記述があります。
通常の学級に在籍する発達障害のある児童・生徒の中には、情緒障害等通級指導学級による指導では、十分にその成果を上げることが困難な児童・生徒もいます。このような児童・生徒に対しては、自閉症・情緒障害特別支援学級(固定学級)において、適切な指導・支援を行うことが有効です。
特に理由がないのであれば、東京都は、速やかに、ほかの自治体を参考にしながら、少なくとも同様の割合まで、自閉症・情緒障害特別支援学級の設置を進めることが望ましいのではないでしょうか。
5. 都内の状況を詳しくみる(令和3年度・当時の調査)
Section titled “5. 都内の状況を詳しくみる(令和3年度・当時の調査)”学級数について:多摩26市の状況
Section titled “学級数について:多摩26市の状況”多摩26市の、令和3年度における、自閉症・情緒障害支援学級の設置状況を、東京都教育委員会のデータ集、自治体サイト、電話での聞き取りにより集め、プロットしました。間違いがあるかもしれませんので、正確な数値が必要な場合は直接教育委員会にお問い合わせください。
なお、ほとんどの自治体において「設置学校数はすぐには増減しない」ものの、「毎年ニーズに応じて(同じ学校内で)学級数を増減させる」としています。
多摩26市では、7割超となる19の自治体が、小・中どちらか、もしくは両方に、すでに固定級を設置しています。 設置していない市は、小平市、八王子市、武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、稲城市の7市です。このうち、三鷹市は、設置を前向きに検討すると議会で答弁しています。
次の表に、令和3年8月1日時点の、「今後の予定」をリストしました。すでに固定級が設置されているいくつかの市が、新設を予定しています。
| 市 | メモ |
|---|---|
| 三鷹市 | 現状設置0なものの、議会では、設置を前向きに検討と答弁。 |
| 町田市 | 令和4年4月、中学校に追加設置予定。級数は未定。 |
| 東村山市 | 令和4年4月、中学校に新設予定。級数は未定。 |
| 清瀬市 | 小学校の学級を移設予定、最終的に学級数の増減予定なし。 |
| 羽村市 | 令和4年4月、中学校に新設予定。級数は未定。 |
| あきる野市 | 令和5年4月、小学校に新設置予定。級数は未定。 |
| 西東京市 | 令和4年4月、中学校に追加設置予定。級数は未定。 |
学級数について:東京23区の状況
Section titled “学級数について:東京23区の状況”次に、東京23区の状況です。東京23区は、多摩26市よりも設置が進んでおらず、4割に当たる9区だけが導入しています。
今後の予定は次のようになり、品川区と葛飾区が、追加で設置する予定です。「すでに設置している自治体が、設置学校数や学級数を増やしていく」様子が伺えます。
| 区 | メモ |
|---|---|
| 品川区 | 令和4年4月、2つの中学校に追加設置予定。級数は未定。 |
| 葛飾区 | 令和4年4月、小・中学校に追加設置予定。級数は未定。 |
児童・生徒数について:多摩26市の状況
Section titled “児童・生徒数について:多摩26市の状況”小学校では多摩市がトップで、中学校では青梅市がトップです。これらの自治体では、比較的情緒障害の子どもたちにとって手厚い(居場所がある)環境であることが伺えます。
なお、児童数・生徒数の規模によって、固定級や通級に通う子どもの割合(居場所の設置状況)が変わるかと思いましたが、特に関係はないようです。小平市より規模が小さい多摩市や青梅市の方が、手厚い環境となっています。
児童数について:東京23区の状況
Section titled “児童数について:東京23区の状況”東京23区では、世田谷区が最も規模(児童・生徒数)が大きい自治体です。令和2年度時点は、全体的に固定級の設置数が少ない状況です。通級に通う児童・生徒数も、多摩26市と比べると少ないです。
これらを見比べると、小平市は「23区寄り」のポジションにあるのかもしれません。
6. 小平市にも導入が必要(令和3年当時の主張)
Section titled “6. 小平市にも導入が必要(令和3年当時の主張)”同級を必要とする人数の割合は、どの自治体でも大きく変わらないはずです。当時、小平市には自閉症・情緒障害特別支援学級が1校も設置されておらず、青梅市の設置率にならえば全児童・生徒数に対して2.6%程度の潜在的需要があると推計していました。
また、通級も含めて考えても、当時の小平市は手厚い市と比べてまだ足りていない状況でした。
すでに自閉症・情緒障害特別支援学級がどこかに設置されている自治体の場合、「学級数は、毎年のニーズに応じて増減させる」というのが通例です。そのため、「まず1校でも設置すること」が何より重要でした。
結果として、請願と継続的な議会質問により、令和5年度に第四小学校、令和7年度に第二中学校への設置が実現しました。今後は運用状況を見ながら、さらなる拡充が期待されます。