チャレンジスクール・エンカレッジスクール
チャレンジスクールとは
Section titled “チャレンジスクールとは”チャレンジスクールとは、東京都が、中途退学問題に対応するため、平成9年9月に立てた「都立高校改革推進計画」に基づいて、平成12年から順次これまでに5校、都内に設置した学校です。
チャレンジスクールについてまとまった資料が見あたりませんが、たとえば、平成24年の文部科学省・高等学校教育部会(第6回)で、東京都教職員研修センターの金子氏は次のように述べています(議事録アーカイブ/資料アーカイブ)。長くなるため要約して引用します。
簡単に言うと、チャレンジスクールとは、小・中学校での不登校や、高校での中途退学を経験しているという生徒が、もう一度チャレンジする学校。三部制の定時制、総合学科。
大きな特色は、学力検査や調査書によらない入学者選抜を行っていること。具体的には、作文や面接を通し、学ぶ意欲を重視している。さらに総合学科の特色を生かし、さまざまな選択科目、あるいは学び直しの科目なども設置している。また三部制ということで、朝、昼、夜、子どもたちの生活のリズムに合わせた時間に授業が受けられるよう編成している。たとえば朝の第一部に通う子は、その後の二部、昼の授業が受けられたり、あるいは昼の生徒は夜の時間帯の授業も受けられるなど、柔軟に履修できる。また、カウンセリング機能、教育相談の機能が充実しており、人的にも配置をしており、複数の担任制などもしいている。
それぞれが所属する部の前後に、ほかの選択科目も履修できる。こういう単位履修により、3年間で卒業する生徒の割合が高い。
具体的な特色のある取組については、たとえば、大江戸高校では、1年次必修履修の生活実践がある。マナー、あいさつ、礼儀、お客様をもてなす、おはしの持ち方などの授業を行い、2年生では生活とマナーなどの取組をしている。1、2年次は学級担任が2名で対応している。
またたとえば、桐ヶ丘高校は、教員全員担任制という特殊な教育相談機能を持たせている。これは、どの先生でも、誰でも、いつでも相談できる。
また、稔ヶ丘高校も特色があり、1年次に全員に履修させる「コーピング」という学校設定科目を設置。大きく2つのねらいがあり、ひとつはコミュニケーションスキル。早稲田大学と共同開発した認知行動療法に基づくプログラムを展開し、コミュニケーションスキルを学ばせる。もうひとつは、学習のスキル。たとえば、話したことを箇条書きにまとめさせるとか、こういう基本的な取組をしている。
(略)
課題は、卒業時に進路が決まらない生徒の割合が、全日制の普通科の平均に比べると高い。これらを解決するために、これまでは中途退学防止と学校から離さないということをねらう視点を持っていたが、今後は卒業後の進路の実現をさらに充実していく必要がある。
なお、この発言からすると「チャレンジスクールには、小・中学校での不登校や、高校での中途退学を経験している生徒でなければ入学できない」ように思えてしまいます。しかし、たとえば大江戸高校のサイトには次のように記載されており、小平市教育委員会の答弁どおり、「不登校や中途退学を経験した生徒に限定しているわけではない」ことが伺えます。
小・中学校時代に不登校を経験した生徒や、高等学校を中途退学した生徒を含め、これまでの教育の中では自己の能力や適性を十分に生かしきれなかった生徒など、多様な生徒が学校生活を通じて自分の目標を見付け、それに向かってチャレンジする学校です。
チャレンジスクール一覧
Section titled “チャレンジスクール一覧”| 学校名 | 所在地 | 年次ごとの定員 | R1年度 応募倍率 | R2年度 応募倍率 | R3年度 応募倍率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 六本木高等学校 | 港区 | 180名 | 1.63 | 1.75 | 1.34 |
| 大江戸高等学校 | 江東区 | 180名 | 1.31 | 1.52 | 1.16 |
| 世田谷泉高等学校 | 世田谷区 | 180名 | 1.28 | 1.26 | 1.02 |
| 桐ヶ丘高等学校 | 北区 | 180名 | 1.16 | 1.21 | 0.97 |
| 稔ヶ丘高等学校 | 中野区 | 240名 | 1.48 | 1.31 | 1.27 |
| (立川地区) | 立川市 | 180名 | 令和7年開校予定 | — | — |
それぞれ1クラスの定員は30名です。ただし稔ヶ丘高校では、自分でつくることができる時間割として「少人数習熟度別指導」というものがあり、そこでは平均15名から20名程度の授業が行われているようです。
チャレンジ枠
Section titled “チャレンジ枠”また、東京都立八王子拓真高校には、チャレンジスクールではないものの、同じ流れを汲んだ「チャレンジ枠」という枠が用意されています(旧サイトのアーカイブ)。
| 学校名 | 所在地 | 年次ごとの定員 | R1年度 応募倍率 | R2年度 応募倍率 | R3年度 応募倍率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 八王子拓真高等学校 | 八王子市 | 60名 | 1.27 | 1.53 | 1.16 |
チャレンジスクールとチャレンジ枠の違い
Section titled “チャレンジスクールとチャレンジ枠の違い”| 項目 | チャレンジスクール | チャレンジ枠 |
|---|---|---|
| 入試 | 学力検査や出身校の調査書の提出が不要。志願申告書・作文・面接で行う | 同左 |
| 過程 | 三部制(昼夜間定時制) | 同左 |
| 方式 | 単位制(学年制なし)、原級留置がない | 同左 |
| 卒業までの期間 | 4年が基本。3年での卒業も可能 | 同左 |
| 定員 | 1クラス30名。稔ヶ丘高校は少人数習熟度別指導あり | 同左 |
| 学科 | 総合学科(普通科目の他に選択科目が選べる) | 普通科 |
| 学校内のクラス編成 | 全員がチャレンジスクール生 | 普通枠:8クラス、チャレンジ枠:2クラス。選択科目は両枠の生徒が同一の授業を受ける |
エンカレッジスクールとは
Section titled “エンカレッジスクールとは”エンカレッジスクールは、東京都教育委員会が、「これまで力を発揮できなかった生徒のやる気を育て、社会生活を送る上で必要な基礎的・基本的学力を身に付けることを目的」として、既存の全日制都立高校を改編して設置した学校です。
平成14年10月の「都立高校改革推進計画 新たな実施計画」で計画され、これまでに6校が指定されています。
エンカレッジスクールの特徴は、『東京都のエンカレッジスクールにみる 学び直しの実状と課題(政策研究大学院大学・2017)』というレポート(PDFアーカイブ)によれば、主に次の5点あります。
- 入学時の知識や技能を問わず、生徒の学びたいという意欲を重視した選考を行うため、入学者選抜で学力検査を行わない
- 集中力が保たれるよう、30分授業や習熟度別授業、少人数授業が導入されている
- 生徒の興味、関心を喚起するため、体験学習を取り入れている
- 成績評価には観点別評価を推進しており、授業態度や提出物、小テストなどを考慮して総合的な評価を実施する。定期テストも当初は行っていなかった
- よりきめ細やかなクラス運営を行うために2人担任制を導入している
*上記レポートには、これ以外にも、エンカレッジスクールの日々の状況が描かれています。
エンカレッジスクール一覧
Section titled “エンカレッジスクール一覧”| 学校名 | 所在地 | 学年ごとの定員(分割前期分のみ) | R1年度 応募倍率 | R2年度 応募倍率 | R3年度 応募倍率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 蒲田高等学校 | 大田区 | 87名~109名 | 0.76 | 1.31 | 0.83 |
| 足立東高等学校 | 足立区 | 88名~119名 | 1.07 | 1.55 | 0.91 |
| 東村山高等学校 | 東村山市 | 118名 | 1.41 | 1.69 | 1.50 |
| 秋留台高等学校 | あきるの市 | 110名~131名 | 1.30 | 1.34 | 1.23 |
| 中野工科高等学校 | 中野区 | 63名~97名 | 0.70 | 0.95 | 0.68 |
| 練馬工科高等学校 | 練馬区 | 88名~106名 | 0.94 | 1.28 | 1.01 |
チャレンジスクールとエンカレッジスクールの違い
Section titled “チャレンジスクールとエンカレッジスクールの違い”| 項目 | チャレンジスクール | エンカレッジスクール |
|---|---|---|
| 募集 | 2月と8月に2回募集。2月は2学年相当以上も | 2月に推薦・前期・後期の募集 |
| 入試の学力検査 | なし | なし |
| 入試の選抜方法 | 志願申告書・作文・面接 | 調査書・作文か小論文・面接・実技試験 |
| 過程 | 三部制(昼夜間定時制) | 全日制 |
| 方式 | 単位制。原級留置がない | 学年制。原級留置がある |
| 学科 | 総合学科(普通科目の他に選択科目が選べる) | 普通科・工業科 |
| 体験学習 | ない? | 設けられている |
| 授業時間 | 45分 | 50分、1年次は一部30分 |
| 卒業までの期間 | 4年が基本。3年での卒業も可能 | 3年が基本 |
| 学級担任 | 1年次は2名 | 2名 |
| 学級定員 | 1クラス30名以内 | 1クラス33人から40人? |
チャレンジスクールやエンカレッジスクールは発達障害の子に適しているか
Section titled “チャレンジスクールやエンカレッジスクールは発達障害の子に適しているか”チャレンジスクールやエンカレッジスクールは、発達障害のことが広く知られる前に計画・設置されています。そのため、発達障害の生徒が十分な支援を受けられる仕組みになっているかというと、そこまで期待できる状況ではないようです。
いずれの学校も、私が調べた限りでは、「発達障害のことをしっかり理解している」印象がありませんでした。一部の学校ではむしろ、「発達障害に分類されるはずの生徒に、不適切な対応がなされているのではないか」という印象も持ちました。
もちろん、発達障害のことをよく理解されており、熱意をもって対応されている先生方もいらっしゃるとは思いますが、前面に見えている状況ではありません。
そのため、願書を出す前に、しっかりそれぞれの学校を調査されることをお勧めします。
発達障害をサポートするために、これらの学校に期待される役割は大きいと思います。都には、合理的配慮の徹底や、教職員の研修を必須化するなど、制度として発達障害を支援する体制を組み入れるよう、早急に対応してもらいたいと願います。