合理的配慮と関連法律
合理的配慮とは
Section titled “合理的配慮とは”合理的配慮とは、障害者から何らかの助けを求める意思の表明があった場合、過度な負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な便宜のことです。
国連「障害者の権利に関する条約」第2条で定義され、日本では障害者基本法、障害者差別解消法に記述があります。
「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。(外務省訳)
具体的な合理的配慮の例
Section titled “具体的な合理的配慮の例”配慮の内容は、一人一人の状態に応じて個別に決まります。よくある例を挙げます。
- 読む:ふりがな(ルビ)、拡大文字、音声読み上げ、デジタル教科書
- 書く:音声入力、ICT機器の使用、記号選択式での解答、板書の写真撮影
- 試験:試験時間の延長、別室での受検、問題の読み上げ
- 環境:座席の配慮、静かな場所の確保
※文部科学省・東京都・大学入試センター等の資料を参考にした一般的な例です。
障害者差別解消法(抜粋)
Section titled “障害者差別解消法(抜粋)”平成25年法律第65号。全ての障害者が、障害者でない者と等しく基本的人権を享有することを目的としています。
重要なポイント
Section titled “重要なポイント”- 障害者の定義に「精神障害(発達障害を含む)」が明記 — ディスレクシアもこれに含まれる
- 行政機関等(国・地方公共団体等)は合理的配慮を「しなければならない」(義務規定)
- 事業者(民間)は合理的配慮をするように「努めなければならない」(努力義務規定)
- ただし、東京都では『東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例(H30.10施行)』により、事業者であっても合理的配慮は義務規定に上書きされています
環境整備と啓発
Section titled “環境整備と啓発”行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。(第5条)
ディスレクシアに対応した環境整備についても、職員への研修が努力義務とされています。
障害者差別解消支援地域協議会
Section titled “障害者差別解消支援地域協議会”国及び地方公共団体の関係機関により構成される協議会を組織できます。小平市ではまだ設置されていないようです。
発達障害者支援法(抜粋)
Section titled “発達障害者支援法(抜粋)”平成16年法律第167号。令和2年時点の条文から主なポイントを紹介します。
- 定義: 「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害
- 基本理念: 全ての発達障害者が社会参加の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと
- 教育(第8条): 可能な限り発達障害児が発達障害児でない児童と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、適切な教育的支援、個別の教育支援計画の作成、いじめ防止等の対策を講じる
- 早期発見(第5条): 市町村は健康診査・健康診断に当たり発達障害の早期発見に十分留意しなければならない
- 就労支援(第10条): 個々の発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保、就労の定着のための支援
障害者手帳は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類です。
ディスレクシアは発達障害に分類されており、申請できるのは 「精神障害者保健福祉手帳」 になります。発達障害が「精神障害」に含まれることには違和感があり、「発達障害者(児)専用の手帳が必要」という声もあります。
「精神障害」という言葉に対する偏見は根強く、申請に対する障壁になっています。統合失調症や薬物中毒の人と発達障害の人に同じ福祉サービスが必要とも思えません。
受験における合理的配慮(大学入試センター)
Section titled “受験における合理的配慮(大学入試センター)”大学入試センターの受験上の配慮事項のうち、ディスレクシアに関係するもの:
- 試験時間の延長(1.3倍)— 文字解答・チェック解答・代筆回答で適用
- 別室の設定
- 拡大文字問題冊子の配布(14ポイント・22ポイント)
- チェック解答の許可
- 注意事項等の文書による伝達
- パソコンの使用(事前相談が必要)
申請には診断書(診断名・心理認知検査等の履歴)、状況報告書(在学期間・高等学校等で行った配慮内容)が必要です。
都立高等学校入試における配慮
Section titled “都立高等学校入試における配慮”東京都教育委員会は、障害のある受検者に対する配慮を実施しています。発達障害に関する配慮の例は次のとおりです。
- 別室受検
- 検査時間の延長
- 問題用紙・解答用紙へのルビ振り
- ICT機器の使用
- 記号選択式での受検
申請は、在学する中学校を通して、志願先の都立高校へ事前に行います(例年12月中旬ごろ)。
英検・漢検などにおける配慮
Section titled “英検・漢検などにおける配慮”- 英検(実用英語技能検定) — 配慮が必要な方を対象に「受験上の配慮」があります。所定の「受験上の配慮要項」を確認のうえ、申請フォームから申請します(受付期間を過ぎると対応できません)。二次試験のみの配慮(車いすの使用、発話への配慮など)も申請が必要です
- 漢検(日本漢字能力検定) — 受検における配慮を希望する場合は、協会の案内にしたがって申請します
→ 英検「受験上の配慮について」/→ 日本漢字能力検定協会「よくあるご質問」
受験における課題
Section titled “受験における課題”実際にディスレクシアのお子さんが受験・進学を目指す中で、次のような課題が生じています(個別の状況によって異なります)。
- 支援実績が配慮の要件になる — 高校・大学入試で配慮を受けるには、在学中の支援実績が求められる。現場判断で支援がないと「実績なし」にされかねず、日頃の支援の記録(学校生活支援シート等)が重要
- 中学校の定期試験で配慮が受けられないことがある — 「対応できる人がいない」「同一時間に同一の試験を受けるのが規則」などとして、事実上配慮が得られないケースがある
- 私立中学在籍者の都立高校受験の不利 — 私立中学の生徒は、公立中学の生徒が使える「入試相談」(事前内定の仕組み)の対象外とされていた。しかし実際はそうではなかった。都と受験校の間でたらい回しになり、情報も公開されていない
- 在籍中の配慮と入試のギャップ — 通級やICT機器の活用など、普段受けている配慮が、入試では同じようには認められないことがある
- ICT機器・デイジー教科書の利用制限 — 配備された端末のセキュリティ設定で、デイジー教科書の再生が妨げられることがある
- 試験当日の運営 — 事前に確認した手順どおりに配慮が行われないことがある
- 心理的な負担 — 「配慮してもらっているのだからよい成績を出さなければ」というプレッシャーや、時間延長の分だけ休み時間が削られて同じ結果を求められる負担
- 経済的負担 — 学習・受験支援の初期費用や、私立に進む場合の学費が大きな負担になる
- 情報が届かない — 申請の要件や手続きが事前に知らされず、相談を重ねて初めて分かることが多い
- 進学を断念する子がいる — ディスレクシアの出現率は高校で低くなるが、それは「治るから」ではなく、居場所を失い進学を断念する子どもがいるためと指摘されている
※制度や対応は変わることがあります。早めに学校・教育委員会に相談することをお勧めします。
その他の関連法律
Section titled “その他の関連法律”- 障害者基本法 — 障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本理念を定める
- 障害者総合支援法 — 障害者の日常生活・社会生活の総合的な支援
- 読書バリアフリー法 — 視覚障害者等の読書環境の整備
- 学校教育法等の一部を改正する法律 — 特別支援教育に関する規定
- 教科書無償法・教科書無償措置法 — 教科書の無償給与