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小平市の国民健康保険(国保)の全体像

保険税・繰り入れ・運営協議会・健診の実費・高額療養費・人工透析・腎臓移植

このページでは、小平市のデータとあわせて、国民健康保険(国保)の説明をします。

保険制度は、病気やけが、介護、失業などに備える仕組みです。いつ起こるか分からない大きな出費に備えて、多くの人が少しずつお金を出し合い、必要になった人に給付します。これを「相互扶助」や「リスクの分散」といいます。

加入者たくさんの人が少しずつ保険料(税)を払う保険者(ほけんしゃ)お金をまとめて必要な人へ給付を受ける人(ある時点では一部の人)一部の人大きな出費があった人給付多くの加入者が少しずつ払い、そのお金を、ある時点で大きな給付を受ける一部の人に届けます。※アイコンの数はイメージです。加入者全員が、いつかは給付を受ける可能性があります。

公的保険は、国や自治体が運営します。医療保険、介護保険、年金、労働保険などがあります。民間の生命保険や医療保険も同じ考え方ですが、このページで扱うのは公的保険です。

保険を運営する主体を「保険者(ほけんしゃ)」、保険に加入している人を「被保険者(ひほけんしゃ)」といいます。

保険料(税)を払う人と、給付を受ける人は、同じとは限りません。健康な人が病気の人を支え、若い人が高齢者を支える形になります。国保は、この公的保険のうち医療保険のひとつです。

まず、全体像:国や自治体の保険制度

Section titled “まず、全体像:国や自治体の保険制度”

国や自治体が運営する主な保険は、次のとおりです(全国共通)。医療保険・介護保険・年金・労働保険に分けて整理します。このうち、このページで詳しく扱うのは、医療保険の中の国民健康保険(国保)です。

国や自治体の保険制度医療保険病気・けが介護保険介護サービス年金老齢・障害・遺族労働保険失業・労災医療保険の内訳(ここだけ取り出しました)被用者保険会社の健康保険国民健康保険(国保)後期高齢者医療制度生活保護(医療扶助)★このページで詳しく扱うのは、医療保険のうちの国民健康保険(国保)です。介護保険・年金・労働保険は概要だけ触れます。

保険ではないもの:生活保護の医療扶助、自立支援医療(障害者総合支援法)、難病医療費助成などがあります。小児医療費助成(自治体独自)や、感染症法に基づく医療費の公費負担もあります。これらは保険料ではなく、税金で費用を負担します。

子ども・子育て支援金は、令和8年度から医療保険の保険料に上乗せして集める仕組みで、保険ではありません。

「国民健康保険」と「国民健康保険組合」の違い

Section titled “「国民健康保険」と「国民健康保険組合」の違い”

名前は似ていますが、運営主体が違います。

項目国民健康保険(市町村国保)国民健康保険組合(国保組合)
保険者市町村(財政運営は都道府県)国保組合
加入できる人その市町村に住む人など同種同業の人や、その家族など
例小平市の国保医師・歯科医師・薬剤師、建設業などの国保組合
このページ詳しく扱う名前の紹介のみ

このページで「国保」というときは、特に断りがない限り、市町村が運営する国民健康保険(市町村国保)を指します。国民健康保険組合は、同種同業の人などが加入する別の保険者で、保険税(料)の算定も組合ごとに異なります。

このうち、小平市の国保を詳しく見ていきます。

国保に加入するのはどんな人?

Section titled “国保に加入するのはどんな人?”

日本に住む人は、原則として、どれかの公的医療保険に加入します。これを国民皆保険といいます。生活保護を受けている人は、保険ではなく医療扶助で医療を受けます。「日本に住む人」には、日本人だけでなく、3か月を超えて日本に滞在する外国人も含まれます。加入は任意ではなく、加入する義務があります。

保険に入っていれば、医療機関の窓口で払うのは医療費の一部です。残りは保険者が医療機関に支払います。窓口負担は原則3割です。義務教育就学前期間は2割、70〜74歳は2割、75歳以上は1割です。一定の所得がある人は、2割または3割になります。高額な医療費には「高額療養費制度」で上限があります。

その内訳は、次のとおりです(医療保険は令和5年3月末時点、生活保護は令和5年度)。

生活保護受給者 約202万人(約1.6%)被用者保険約7,746万人(約6.3割)国民健康保険約2,413万人(約2.0割)後期高齢者医療約1,913万人(約1.6割)

四角の幅は、人数の割合です。合計は約1億2,274万人です。医療保険の内訳は、次のとおりです。

生活保護受給者のうち、医療扶助で医療を受ける人は約171万人(84.7%)です(令和5年度)。医療扶助は、保険ではなく公費で医療費を賄う仕組みです。

制度加入者数主な対象運営
健康保険(協会けんぽ)約3,944万人中小企業の従業員など国(全国健康保険協会)。都道府県単位で保険料率が決まります
健康保険組合約2,820万人大企業などの従業員健康保険組合。組合ごとに保険料率が違います
船員保険協会けんぽに含む船員国(医療部分は協会けんぽ)
共済組合約982万人公務員・教職員など各共済組合
★ 国民健康保険(市町村国保)約2,413万人(国保組合を含む)自営業・退職者など市町村(保険者は都道府県)
国民健康保険組合(国保組合)(内数)同種同業の人など国保組合
後期高齢者医療制度約1,913万人75歳以上など都道府県単位の広域連合

★の国民健康保険(市町村国保)が、このページで詳しく扱う制度です。介護保険・年金・労働保険は、国保との関係だけ触れます。

船員保険の医療部分は、2010年に協会けんぽへ統合されました。

出典:国民健康保険法第5条・第6条(加入対象)、小平市「国民健康保険の概要」(加入対象)。加入者数は厚生労働省「我が国の医療保険について」(令和5年3月末時点)。生活保護受給者数(2,020,576人)と医療扶助受給者数(1,712,181人)は、厚生労働省「被保護者調査(令和5年度確定値)」によります。

  • 被用者保険:会社の健康保険・共済組合・船員保険。会社などに勤めている人は、国保ではなくこちらに加入します。
  • 国民健康保険(国保):退職した人、自営業の人など。厚生年金を受け取っているだけの人も。
  • 後期高齢者医療制度:75歳以上の人など(65〜74歳で一定の障害がある人も)。
  • 国保には年齢の下限がありません(0歳から加入します)。

介護保険は、医療保険とは別の制度です(全国共通)。0〜39歳は加入しません。40歳になると、医療保険とは別に介護保険にも加入します。加入者は、年齢で2つに分かれます。

介護保険の加入者(全国)年齢で、加入する人としない人に分かれます0〜39歳加入しない約4,700万人40〜64歳(第2号)約4,188万人(40歳以上の約5.4割)65歳以上(第1号)約3,585万人(40歳以上の約4.6割)

四角の幅は、人数の割合です。0〜39歳は加入しないため、グレーで示しています。0〜39歳の人数は、総人口(約1億2,495万人)から40歳以上の加入者数を引いた概数です。

  • 40〜64歳(第2号被保険者):国保に加入していれば、保険税に「介護納付金分」が上乗せされます(医療保険者がまとめて納めます)。
  • 65歳以上(第1号被保険者):介護保険料を市に納めます(原則、年金から天引き)。

つまり、介護保険に入っているからといって、国保に入らなくてよいわけではありません。国保と介護保険は、両方に加入します。

出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」(第1号は令和4年度末、第2号は令和4年度の月平均)。0〜39歳の人数は、総務省統計局「人口推計」(令和4年10月1日)から算出した概数です。

保険税は、加入者ごとではなく世帯主がまとめて納めます(小平市の場合)。世帯主が国保に加入していなくても、世帯に加入者がいれば、その世帯主が納税義務者になります。

出典:地方税法第703条の4(国民健康保険税の納税義務者)、小平市「国民健康保険の概要」(世帯主が納税義務者)。

同じ世帯世帯主会社の健康保険妻国保子国保国保加入者納税義務者世帯主国保加入者分をまとめて納める

世帯主自身が国保に加入している場合は、世帯主が加入者と納税義務者を兼ねます。

国保のお金は、誰から集めて、誰に払うのか。下の図は小平市の場合です(令和7年度決算)。この流れは、ほかの自治体でも基本的に同じです。

国 約34億円お金を払う人国保加入者 約3万4千人(保険税 約36億円)東京都(交付金など 約118億円)市の一般会計(繰り入れ 約22億円)国保の会計(特別会計)歳入 約179億円お金を受け取る人(幅は金額に比例)医療機関保険給付費 約114億円(64%)東京都(戻す分)事業費納付金 約56億円(32%)右端の細い4つ(いずれも全体の約1%):・総務費 約2.2億円(職員の経費など)・諸支出金 約1.9億円(償還金・還付金など)・保健事業費 約1.8億円(健診の委託料など)・基金積立金 約1.7億円(事業運営基金へ)事業費納付金の内訳(令和7年度)医療給付費分37億5,563万円後期高齢者支援金等分13億6,731万円介護納付金分4億8,945万円合計56億1,239万円※事業費納付金のうち、子ども・子育て支援納付金(令和8年度から・約1億3,000万円)が加わります。小平市が納めた納付金は東京都へ(東京都から交付金として戻る)

入ってくるお金は3つです(国保加入者の保険税、国と東京都の交付金など、市の一般会計からの繰り入れ)。出ていくお金は、大きく次のとおりです。金額は、令和7年度決算の概数です。

  • 保険給付費(約114億円):医療機関に払う医療費です。
  • 事業費納付金(約56億円):東京都に返す分です。東京都から受け取って、また返す理由は後述します。
  • 保健事業費(約2億円):健診機関などに払う、健診(健康診断)の委託料などです。
  • 基金積立金(約1.7億円):国民健康保険事業運営基金への積み立てです。
  • 総務費(約2.2億円):国保の事務を行う職員の経費などです。
  • 諸支出金(約1.9億円):償還金・還付金などです。

子ども・子育て支援納付金は、令和8年度から新設された分です。東京都へ払う事業費納付金に含まれ、令和8年度予算では約1億3,000万円です(予算書の子ども・子育て支援金見込額は1億3,141万3千円)。

出典:令和7年度小平市国民健康保険事業特別会計決算(歳入歳出決算書、審査意見書)。金額は概数です。

平成30年度から、都道府県が保険者の役割を担うことになりました(全国共通)。小平市の場合、保険者は東京都です。

「保険者(ほけんしゃ)」とは、保険を運営する主体のことです。誰にいくら給付するかを決め、支払う責任を持ちます。国保では、平成30年度から都道府県が保険者になりました。市町村は、加入者の資格管理や保険税の賦課・徴収、給付の窓口事務を担います。加入者から見ると窓口は市ですが、財政運営の責任は東京都にあります。

小平市が集めたお金は、いったん東京都にまとめて納められ、東京都から各市へ交付金として配り直されます。これは、市ごとの医療費の違いをならすためとされています。

交付金118億円の財源は、小平市自身の納付金約56億円だけではありません。国の負担分が約34億円、東京都の税金や他都の市町村の納付金などが約28億円あります(概算)。国と東京都のお金も、いったん東京都の国保会計に入ってから、小平市に配られます。

各市(保険税などを集める)高齢者が多い市医療費が多い小平市事業費納付金(約56億円)若い人が多い市医療費が少ない国小平市分 約34億円交付金の約28.6%東京都(保険者)お金を一つにまとめて、配り直す東京都の税金など小平市分 約28億円他都の市町村の納付金を含む各市(医療費にあてる)高齢者が多い市医療費が多い小平市交付金(約118億円)若い人が多い市医療費が少ない高齢者が多い市は医療費が多く、若い人が多い市は少ない。都全体で分け合うことで、負担の差を小さくする。※国・東京都の金額は、小平市の交付金118億円に対する按分の概算。都の税金などには他都の市町村の納付金を含む。

金額の規模(令和6年度・令和7年度)

Section titled “金額の規模(令和6年度・令和7年度)”

小平市と東京都の間で動くお金の規模です(小平市の国保特別会計)。

年度小平市 → 東京都(事業費納付金)東京都 → 小平市(交付金など)
令和6年度60億226万円(後期高齢者支援金等分を含む)116億8,738万円
令和7年度56億1,239万円117億6,055万円

小平市が東京都へ払うより、東京都から受け取るほうが大きくなっています。差額は、国の公費や東京都の負担、ほかの自治体の納付金などでまかなわれています。

事業費納付金の内訳です。

内訳令和6年度令和7年度
医療給付費分41億3,566万円37億5,563万円
後期高齢者支援金等分13億7,187万円13億6,731万円
介護納付金分4億9,473万円4億8,945万円
合計60億226万円56億1,239万円

出典:令和7年度小平市各会計決算及び基金の運用状況審査意見書(令和6年度との比較を含む。小平市の決算特別委員会資料)

納付・交付・支払いのタイミング

Section titled “納付・交付・支払いのタイミング”

事業費納付金は、東京都の規則で年8回に分けて納めます(8月4日〜3月4日)。普通交付金は、市の資金不足を防ぐため、基本として毎月交付されます。医療機関への支払いは、診療月の翌月10日までにレセプトを請求し、翌々月20日頃に東京都国民健康保険団体連合会(国保連)から支払われます。

事業費納付金を払うと同じ年度に交付金として配り直されますが、実績との差額は翌年度に精算されます。令和6年度分の返還は、令和7年度の諸支出金(償還金など約1.9億円)に含まれています。

国保の資金の流れ(1年間のタイミング)小平市の場合(年度のイメージ)4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月国保税加入者→市・普通徴収8回事業費納付金市→東京都・年8回普通交付金東京都→市・ほぼ毎月医療機関への支払い市→国保連→医療機関精算翌年度1期2期3期4期5期6期7期8期8/49/410/411/412/41/42/43/4ほぼ毎月現物給付分は診療月の翌々月毎月(診療月の翌々月20日頃)診療月の翌月10日までにレセプト請求翌年度に精算交付金の返還・追加交付※国保税(普通徴収)は7月〜翌年2月の8回。納期限は原則月末(12月は25日)、休日は翌営業日。※事業費納付金は年8回。納期限は8/4・9/4・10/4・11/4・12/4・1/4・2/4・3/4。端数は第一期。休日は前日(第六期を除く)。※普通交付金は、市の資金不足を防ぐため、基本として毎月交付。特別交付金は別スケジュール。※医療機関への支払い(現物給付分)は、診療月の翌月10日までにレセプトを請求し、翌々月20日頃に支払われます。※年度末に実績との差額を精算し、翌年度に返還または追加交付。2月診療分は年度末の特例あり。

国保税の納期限は月末、事業費納付金の納期限は翌月4日です。実務上は、国保税が入った数日後に、事業費納付金を東京都へ納める形になります。

出典:

制度が説明する理由(負担の平準化)

Section titled “制度が説明する理由(負担の平準化)”

国保の加入者は、市ごとに年齢や所得の構成が大きく違います。高齢者が多い市は1人当たりの医療費が多く、若い人が多い市は少なくなります。市ごとに完結させると、医療費の多い市の保険料だけが高くなってしまいます。そこで、都道府県単位でお金をまとめて配り直し、加入者1人当たりの負担の差をならす、と説明されています。小平市は、東京都を通じてほかの自治体とお金を共有している形です。

ただし、この仕組みには、次のような問題があるという指摘があります。市がコストを抑える努力が弱まる方向と、高齢者が多い市に抑制圧力がかかる方向の、逆向きの指摘が含まれている点に注意してください。

  • 市が医療費の適正化に取り組む動機は弱まる:医療費が増えても、その増加分は都全体で薄く広く負担するため、市が給付費の伸びを抑えるために努力する動機は弱まります(モラルハザード)。ただし、医療費の主な決定要因は提供側の診療量なので、この動機の弱まりだけが医療費を増やしているわけではありません。
  • 高齢者が多い市には抑制圧力がかかる:負担の差は完全にはなくならず、高齢者が多い市は医療費が高いと見られやすく、標準保険料率やペナルティを通じて「ほかの市の負担を増やさないように」という圧力がかかります。その結果、医学的に必要な受診まで控えさせる方向になりかねません。これは、市の動機が弱まることとは別の、高齢者世帯へのしわ寄せの問題です。
  • 医療提供側に適正化の動機が働きにくい:診療報酬は出来高払いが中心で、医療サービスの量に応じて支払われます。そのため、医療費の増加は医療機関の収入の増加につながります。給付が増えるほど医療提供側の収益も増える構造です。これは負担の平準化そのものではなく、診療報酬の設計の問題です。
  • 負担は加入者に向かう:小平市でも、東京都が示す標準保険料率との乖離を縮めるため、法定外繰り入れを減らし、保険税を引き上げる対応が続いています。監査委員も、東京都が示す標準保険料率と市の保険税率に「大きな乖離がある」と指摘しています。これは、負担の平準化とセットになった標準保険料率・ペナルティによるものです。

安竹は、この仕組みには、市が医療費の伸びを気にする動機が弱まる方向と、高齢者が多い市に抑制圧力がかかる方向の、相反する問題が同時に含まれていると考えています。どちらも、医療費の主な決定要因である提供側の診療量には直接働きません。医療費の伸びを抑えるには、単に負担を平準化するだけでなく、医療提供の側の仕組み(診療報酬など)にも踏み込んだ議論が必要です。

では、医療費の伸びをどう抑えるか

Section titled “では、医療費の伸びをどう抑えるか”

ここからは、制度設計についての安竹の整理です。

まず言葉を分けます。適正化は、医学的に不要な医療(無駄)を減らすことです。抑制は、必要な医療まで控えさせることです。目指すべきは適正化です。抑制は、手遅れによる重症化を招き、医療費を増やすことになります。

「誰が負担するか」を変えるだけでは、医療費の伸びは十分に抑えられません。医療費の増加は、主に提供側(医療機関)の診療量で決まるからです。診療報酬は出来高払いが中心で、診療の量に応じて収入が増えます。誰が払うかを変えても、提供側の「量を増やす動機」は変わりません。

国が公費負担を増やす案も、負担の所在が変わるだけで、適正化にはつながりにくいという整理になります。

案適正化のインセンティブ公平性医療費は適正化できるか
国が公費負担を増やす弱まる負担が全国の税へあまり変わらない
公費を低所得者対策に厚くする影響が小さいよくなるあまり変わらない(公平性は改善)
支払方式・提供体制の改革効く中立進む(本命)

そこで、次の順で考えるのがよいと考えます。

  1. 公費は「守るべき部分」に入れる:低所得者の保険料軽減、子どもの均等割の減免、高額療養費の負担軽減などです。これは抑制とは別の軸で、公平性のための公費です。
  2. 医療費の伸びを評価する仕組みに変える:いまのペナルティは「赤字繰入を保険料で埋めろ」という話で、医療費を適正化する動機にはなっていません。1人当たり給付費の伸びを抑えた市に配分を厚くする方向に変えるべきです。
  3. 提供側の支払方式を変える(本命):入院の包括払いの拡大、無駄な検査や投薬への減算です。予防や重症化予防の成果への報酬も考えられますが、成果指標の科学的根拠を確認する必要があります。
  4. 市ができること:小平市は、健診の受診率向上と重症化予防の対象拡大に取り組めます。透析は1人あたり年間500〜600万円かかるため、1人を防げれば効果は大きいです。ただし、診療報酬は国の権限、財政運営は東京都で、市が医療費を動かせる範囲は限られます。

「成果への報酬」には注意が必要です。 予防や重症化予防の「成果」への報酬は、成果指標の設定を誤ると、科学的根拠が薄いまま導入されることがあります。何を「成果」とするかは、医療費の削減や健康状態の改善につながるかを確認して決める必要があります。健康診査の効果については、後の「7. 健診の費用は誰が払うのか」で、伊藤央議員の議会指摘とあわせて触れます。

この透析は、重症化予防と制度設計の両方が関わる典型例です。腎臓移植という根治的な選択肢があるのに、日本では移植が進まず、透析に留まる人が多いのが現状です。安竹は、透析を移植までの「橋渡し」と位置づけ、腎臓移植を推進すべきだと考えています。後の「8. 人工透析をめぐる課題」で、小平市のデータとあわせて見ます。

  • 国保は、加入者の保険税と、国・東京都のお金で運営しています。
  • それでも足りない分を、市の一般会計から移しています。これが「繰り入れ」です。
  • この繰り入れの解消が求められ、保険税の引き上げと、東京都からのペナルティにつながっています。安竹は、この仕組み自体に問題があると指摘しています。

1. 「保険税」と「保険料」は何がちがう?

Section titled “1. 「保険税」と「保険料」は何がちがう?”

市町村には、保険税で集める「税方式」と、保険料で集める「料方式」があります(全国共通)。小平市は税方式です(小平市の場合)。法律の根拠が違い、実務でも差が出ます。

項目保険税(小平市)保険料
根拠となる法律地方税法国民健康保険法
呼び方国民健康保険税国民健康保険料
国の改正の公布時期年度末になりやすい1〜2月ごろ
市の条例改正翌年度にずれ込みやすい年度内に対応しやすい
税料保険税(税方式)保険料(料方式)小平市はこちら根拠:地方税法公布:年度末になりやすい影響:条例改正が翌年度にずれやすい呼び方:国民健康保険税根拠:国民健康保険法公布:1〜2月ごろ影響:年度内に対応しやすい呼び方:国民健康保険料同じ国保の保険料を、「税」として集めるか「料」として集めるかの違いです(全国共通)。

「税」なので、納付の仕組みは税のルールに沿います。市民の負担額や給付内容は、税方式でも料方式でも変わりません。どちらが得ということはありません。どちらも同じ国保の給付を支えるお金で、所得割・均等割などで計算し、強制徴収されます。違いが出るのは、法的な位置づけと徴収手続です。たとえば、保険税の消滅時効は5年、保険料は2年です。徴収の優先順位や、不服申立ての窓口も異なります。税方式は徴収力が強く、料方式は制度改正に迅速に対応しやすい、という違いがあります。

出典:地方税法第703条の4(保険税)、国民健康保険法第76条(保険料)。時効は地方税法第18条、国民健康保険法第110条。優先順位は地方税法第14条、地方自治法第231条の3。

2. 繰り入れ — 一般会計からの応援

Section titled “2. 繰り入れ — 一般会計からの応援”

小平市の場合、令和7年度決算の繰り入れは、次の2種類に分かれます。

一般会計一般会計からの繰り入れ 約22億円法定内 約10億円法定外(赤字)約12億円法律で決まっている分低所得者の軽減、職員給与、出産育児一時金など保険税だけでは足りない分国が計画的な解消を求める赤字分です。加入者以外の市民の税金も使っています。※令和7年度決算。金額は概数です。

法定内と法定外の区別は、全国共通の制度です。小平市の場合、法定外繰り入れが令和4年度から大きく増えています。

一般会計からの繰り入れと法定外繰入の推移(小平市)010203020.611.4令和元19.110.1令和218.89.2令和321.011.7令和426.617.2令和527.818.0令和622.112.0令和7法定内法定外(赤字)単位:億円。合計は一般会計からの繰り入れ。令和4年度から法定外繰入が大きく増え、令和6年度に約18億円、令和7年度に約12億円に減りました。

小平市の場合、主な原因は、東京都に支払う事業費納付金の高止まり、1人当たり医療費の増、加入者数の減少です。加入者が減ると、同じ医療費を少ない人数で分けるため、1人当たりの負担が増えます。

出典:国民健康保険法第72条の3(保険基盤安定繰入金など)、令和7年度小平市国民健康保険事業特別会計決算(繰入金の内訳)。

3. 繰り越し — 決算で余ったお金

Section titled “3. 繰り越し — 決算で余ったお金”

決算で余ったお金(実質収支)

東京都への返還金

翌年度の事業費納付金に充当

国民健康保険事業運営基金へ積み立て

一般会計へ戻す

決算で収入が支出を上回った分を繰り越すのは、全国共通の制度です。小平市の場合、令和7年度は実質収支が1億4,495万円でした。これは令和8年度に繰り越し、事業費納付金の支払いなどに充てます。

法定外繰入をしていても実質収支が黒字になることがあります。これは、支出が見込みより少なかったり、収入が想定より多かったり、年度末の精算が翌年度に回ったりするためです。黒字分は、翌年度の財源として繰り越すか、基金に積み立てます。

出典:地方自治法第208条(会計年度独立の原則)、令和7年度小平市国民健康保険事業特別会計決算。

4. 基金 — 税率アップに備える貯金

Section titled “4. 基金 — 税率アップに備える貯金”

小平市の場合、残高と積立額は次のとおりです。

国民健康保険事業運営基金の残高(令和6年度末→令和7年度末)単位:億円012341億6,959万円+1億6,759万円3億3,718万円令和6年度末令和7年度の積立令和7年度末前年度末の約1.7億円に、約1.7億円を積み立て、約3.4億円になりました。

「国民健康保険事業運営基金」は、市が独自に積み立てる基金です(小平市の場合)。これとは別に、各都道府県には「国民健康保険財政安定化基金」があります(全国共通)。都道府県全体で医療費の急増に備えるお金で、必要に応じて貸付を受けられます。小平市の決算資料には、市が設置する基金としての財政安定化基金は出てきません。東京都が設置する基金で、小平市の決算には負担金として現れます。東京都の令和6年度末の基金積立残額は約26.8億円です(厚生労働省「財政安定化基金貸付等状況」)。小平市の財政安定化基金負担金は1,000円と計上されています。

法定外繰入をしながら基金に積み立てるのは、一見矛盾して見えます。これは、単年度の収支と、保険税だけでは足りない構造的な赤字を別に考えているためです。基金は、将来の税率の急上昇を抑えるための貯金で、使い道が限定されています。ただし、一般会計からの繰入をしながら貯金する状態は、家計にたとえると赤字なのに貯金するようなもので、法定外繰入の解消を優先すべきだという批判もあります。

出典:小平市国民健康保険条例、令和7年度小平市国民健康保険事業特別会計決算(基金積立金)。財政安定化基金の残額は厚生労働省「財政安定化基金貸付等状況(令和6年度末)」によります。

5. 法定外繰入の削減計画とペナルティ

Section titled “5. 法定外繰入の削減計画とペナルティ”
法定外繰入の削減計画(小平市)0102011.4令和元10.1令和29.2令和311.7令和417.2令和518.0令和612.0令和711.1令和8(予算)令和16年度 0法定外繰入解消目標令和8年度は予算。令和5年度に約17億円まで増えた法定外繰入を、令和7年度に約12億円、令和8年度予算で約11億円まで減らし、令和16年度の解消が目標です。

計画の内容と目標年次は市ごとに決めます。小平市の場合、令和8年度予算では法定外繰り入れを11億1,434万円とし、前年度より3億7,900万円減らす計画です。ただし、安竹は、法定外繰入を「市の努力不足」として解消ありきで進めるのではなく、国・都の公費投入を増やしたいと考えています。保険税だけに頼らない制度にすべきだという主張です。

ペナルティ(交付金の減額)のしくみ

Section titled “ペナルティ(交付金の減額)のしくみ”

市が計画どおりに法定外繰入を減らせないと、東京都からの交付金が減ります(東京都の場合)。これがペナルティです。税率を上げても法定外繰入が減らなければ、ペナルティは発生します。

安竹は、法定外繰入は市の努力不足だけで生じるものではなく、保険税だけでは医療費を賄えない構造的な問題から生じていると考えています。そのため、法定外繰入の解消を前提としたペナルティは、不足を市民負担に転嫁する仕組みになりかねないと指摘しています。

ペナルティ(交付金の減額)の推移約370万円約350万円約350万円約420万円約530万円令和元年度令和4年度令和5年度令和6年度令和8年度(見込み)

東京都は、法定外繰入の解消状況を点数化し、交付金の配分に反映しています。小平市の場合、解消していればプラス60点、現状はマイナス40点で、その差100点は約1,300万円に相当します。ただし、これは解消を前提とした評価であり、安竹はこの評価基準自体に問題があると考えています。

出典:令和7年10月17日 特別会計決算特別委員会(会議録)。

6. 国保運営協議会は何をするところ?

Section titled “6. 国保運営協議会は何をするところ?”

税率や給付の見直しは、市長の諮問機関である国民健康保険運営協議会で審議します(全国共通で、市町村ごとにあります)。小平市の協議会は「小平市国民健康保険運営協議会」です。市長は答申を受けてから条例案を議会に出し、議会が議決します。

市長が諮問

国保運営協議会で審議

答申

市が条例案を議会へ提出

議会が議決・認定

小平市の場合、令和5年11月の答申では、法定外繰り入れの計画的解消が必要とする一方、「11年間で6回の改定、40%の値上げになれば、若者の負担が増える」という懸念も示されました。協議会からは、制度の全体像を市民に伝えてほしいとの要望も出ています。

出典:国民健康保険法第11条(国民健康保険事業の運営に関する協議会)、小平市国民健康保険条例。

特定健康診査(特定健診)は、全国共通の制度です。40歳から74歳までの国保加入者が対象です。受診時の窓口負担は0円です。ただし、費用がかからないわけではありません。費用は国保の会計から出ています。

小平市の案内では、以前「無料」と表示されていました。安竹は、実際はかなりの費用がかかっているのに「無料」とうたうのは、人をだます行為に等しいと指摘しました。令和6年3月27日の本会議で、安竹は次のように述べています。

実際はかなりのお金がかかっているのに、特定健診は無料ですよとうたうことは、人をだます行為にも等しいんじゃないかなと思っています。

市は、受診券を送る際に実際の費用を載せることを検討すると答弁しました(会議録)。

令和6年度の特定健診の委託料単価は9,000円台でした(前年度は8,000円台)。受診者は約1万800人で、単価の上昇により事業費が1,000万円超増えています。加入者の窓口負担は0円ですが、1回あたり9,000円台を国保の会計から健診機関に支払っています。

特定健診の委託料単価(1回あたり)8,000円台9,000円台令和5年度令和6年度受診者約1万800人窓口負担 0円※棒の高さは「台」の目安で、正確な金額ではありません。
項目金額
特定健診の委託料単価(令和6年度)9,000円台/回
加入者の窓口負担0円
国保の会計から健診機関へ支払う額9,000円台/回

33%33%34%小平市の特定健診1回あたりの財源(おおよそ)国 約3,000円 [33]東京都 約3,000円 [33]保険税など 約3,000円 [34]

1回あたり9,000円台を、国・東京都・保険税などでおおよそ3,000円ずつ負担するイメージです(実際の割合は33:33:34)。

国と東京都の補助で足りない分は、国保の保険税でまかないます。保険税でも足りない分は、法定外繰り入れや基金から充てられます。つまり、窓口では0円に見える健診も、1回あたり9,000円台の費用が保険税・公費で支えられています(小平市の場合)。

安竹は、この実費を市民に示すよう「特定健診の実費記載」を求めてきました(令和6年3月定例会の討論)。

健診の効果は確認されているのか

Section titled “健診の効果は確認されているのか”

特定健診の受診率向上が、医療費の削減や寿命の延伸につながるかについては、科学的根拠が十分でないという指摘があります。伊藤央議員は、令和7年10月17日の特別会計決算特別委員会で、「健康診査と寿命の相関性を示すエビデンスは確認していない」という答弁が続いていること、「医療費はずっと増え続けている」ことを指摘しました(M75、M82)。同議員は、健診を全部やめろと言っているのではなく、健康施策の効果を検証して見直すべきだとも述べています(M85)。健診の費用を議論するときは、費用だけでなく、効果の検証も必要です。

出典:令和7年10月17日 特別会計決算特別委員会(会議録)

ここでは、前の「では、医療費の伸びをどう抑えるか」で触れた人工透析を、小平市のデータで見ます。まず、透析がゴールではなく、腎移植までの橋渡しであることを確認します。

腎臓移植の啓発チラシ。透析はゴールではなく、腎移植という選択肢を、と訴えている。
チラシ:透析の負担と、腎移植で変わる生活、海外の事例をまとめたもの。

安竹は、日本では人工透析が橋渡しの医療であることをこれまで指摘し、腎臓移植の推進が必要だと訴えてきました(令和7年12月定例会の討論)。透析は腎臓の機能を代替する治療で、根治ではありません。腎臓移植は根治的な治療で、生存率やQOLが高いとされています。海外では、透析を移植までの橋渡しと位置づけ、移植を優先する政策があります。

腎機能の低下透析(橋渡し)腎移植(根治)透析はゴールではなく、腎移植までの命をつなぐ橋です。日本では透析に留まる人が多く、腎移植に進む人は限られています。
  • 米国:2019年の「Advancing American Kidney Health」は、次の3つの目標を掲げました。2030年までに末期腎不全の発症を25%減らす。2025年までに新規末期腎不全患者の80%を在宅透析または移植にする。2030年までに移植可能な腎臓を2倍にする。
  • 英国(イングランド):2020年5月から、臓器提供の「みなし同意(opt-out)」制度に移行しました。提供意思を登録していない成人は、原則として提供者とみなされます(NHS Blood and Transplant)。
  • スペイン:スペインは、臓器提供のみなし同意制度を採っています。病院単位の移植コーディネーターを組み合わせた「スペイン・モデル」で、臓器提供率が高い水準にあります(Organización Nacional de Trasplantes)。
  • カナダ(ノバスコシア州):2021年1月、北米で初めて臓器提供の「みなし同意(deemed consent)」を導入しました。2021年は23人の臓器提供者、112件の臓器移植(うち腎臓79件)でした(ノバスコシア州政府、NS Health 2021-22 Annual Report)。
  • クロアチア:臓器提供のみなし同意に加え、病院ごとに移植コーディネーターを置く体制を整えました。臓器提供者は2000年の12人から2016年は166人に増え、人口100万人あたり39.5人(2016年)です(Croatian Medical Journal、ドイツ連邦議会調査資料)。

小平市の令和6年度の腎臓移植は2件でした。市はグリーンリボンキャンペーンとして、日本臓器移植ネットワークのパンフレットと臓器提供意思表示カードを窓口で配布しています。資格確認書の裏面にも臓器提供意思表示欄があります。

出典:令和7年10月17日 特別会計決算特別委員会(会議録)

次に、透析を含む医療費の内訳を見ます。令和6年度の高額療養費について、市は次のように答えています。まず、疾病別の医療費総額(月額)です。

疾病別の医療費総額(月額・令和6年度)筋骨格(整形外科・骨折など)高血圧症脂質異常症精神疾病がん3億5,600万円3億100万円2億4,800万円2億1,900万円2億1,200万円※月額です。年額は単純に12倍した概算になります。
順位傷病月額総額
1位筋骨格(整形外科・骨折など)3億5,600万円
2位高血圧症3億100万円
3位脂質異常症2億4,800万円
4位精神疾病2億1,900万円
5位がん2億1,200万円

市の答弁では、月額を12倍したものが年間の総額になります。筋骨格は人数が多いため総額が最も大きく、高血圧症・脂質異常症・精神疾病・がんが続きます。ここでの金額は、患者の窓口負担を含む医療費の総額です。国保が実際に支払う保険給付費(約114億円)とは異なります。

会議録では、筋骨格について「人数も多い」とだけ説明され、具体的な人数は示されていません。疾病別の対象人数は、公表されていないようです。

次に、高額療養費の1人当たりの医療費です(令和6年度)。市の答弁の金額は月額です。

高額療養費の1人当たり(月額・令和6年度)人工透析脳出血がん心筋梗塞脳梗塞49万円16万6,000円12万2,000円11万4,000円10万8,000円※月額です。年額換算は約12倍(人工透析は約588万円)です。
順位傷病1人当たりの月額年額換算(概算)
1位人工透析49万円約588万円
2位脳出血16万6,000円約199万円
3位がん12万2,000円約146万円
4位心筋梗塞11万4,000円約137万円
5位脳梗塞10万8,000円約130万円

年額換算は、月額を単純に12倍した概算です。実際の年額とは異なる場合があります。人工透析は49万円×12=約588万円となり、年間500〜600万円という説明と一致します。

人工透析は、年間の延べ1,371人と答弁されています(令和6年度)。

高額療養費の上位3人には、血友病の療養費、胸部大動脈の手術、心不全の手術が挙げられています(令和6年度)。会議録では、上位3人の病状のみが示され、個人ごとの金額は公表されていません。令和6年度の高額療養費は、総額約14.7億円(24,346件、1件あたり約6万0,375円、1人あたり約4万2,672円)です。血友病は、出血を防ぐための凝固因子製剤を定期的に使う治療で、薬剤費が高額になりやすい疾患です。

重症化予防は全国共通の枠組みで、取り組みの内容は市ごとに異なります。小平市は、糖尿病性腎症重症化予防事業を進めています。対象者は301人で、令和6年度は19人が参加し、17人が最後まで取り組みました。令和5年度からは、主治医と薬剤師が参加を勧める「薬剤師モデル」も導入しています。ただし、参加者数や完走者数が、透析の予防や医療費の削減につながるかは、効果検証が必要です。

出典:令和7年10月17日 特別会計決算特別委員会(会議録)。金額は月額です。

  • 国保は、保険税と公費で運営し、足りない分を一般会計からの繰り入れで補っています。
  • そのうち「法定外繰り入れ」は令和5年度に約17億円まで増え、令和7年度は約12億円に減りました。
  • 法定外繰入の解消が遅れると、保険税の引き上げと、東京都からのペナルティが重なります。安竹は、この仕組み自体に問題があると指摘しています。
  • 健診の「無料」も、実際は保険税で支えられています。
  • 医療費では人工透析が突出して高く、重症化予防の効果検証と腎臓移植の周知が課題です。

国民健康保険に関連する法律と小平市の条例

Section titled “国民健康保険に関連する法律と小平市の条例”

国保の運営に関わる主な法令と、小平市の条例・規則・要綱です。法律名をクリックすると、e-Gov(法令検索)で全文を読めます。

法律は国会が制定する国のルールです。政令は内閣が、省令は各省大臣が、法律を実施するために定める命令です。条例は地方議会が制定する地方のルールです。規則は首長や委員会が条例を執行するために定めるもので、要綱は法律・条例ほどの強制力を持たない行政内部の基準です。

区分名称内容
法律国民健康保険法(昭和33年法律第192号)国保の制度全般
政令国民健康保険法施行令(昭和33年政令第362号)国保法の細目
省令国民健康保険法施行規則(昭和33年厚生省令第53号)国保法の手続
法律地方税法(昭和25年法律第226号)国民健康保険税の根拠
政令地方税法施行令(昭和25年政令第245号)地方税法の細目
省令地方税法施行規則(昭和29年総理府令第23号)地方税法の手続
法律高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)後期高齢者医療、特定健診
法律介護保険法(平成9年法律第123号)介護保険、介護納付金
法律子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)子ども・子育て支援納付金
法律健康保険法(大正11年法律第70号)被用者保険
法律国民年金法(昭和34年法律第141号)国民年金
法律厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)厚生年金
法律生活保護法(昭和25年法律第144号)医療扶助
区分名称内容
条例小平市国民健康保険条例(昭和34年条例第9号)市の国保事務、運営協議会、保険給付、保険税
規則小平市国民健康保険条例施行規則条例の手続
要綱小平市国民健康保険税減免取扱要綱保険税の減免
条例小平市税条例国保税の賦課徴収に準用
条例小平市行政手続条例条例第32条で適用除外を規定

このページでは、国保の財政と制度の入口を中心に説明しました。ここでは、本文で十分に扱えなかった論点のうち、追加できるものをまとめます。

レセプト点検は、医療機関が提出する診療報酬明細書(レセプト)の内容を確認し、誤った請求や不正な請求を防ぐ事務です。資格の確認、給付の重複、診療内容の妥当性などを点検します。点検で見つかった誤請求は、国保に返還されます。

出典:国民健康保険法第45条(診療報酬の審査・支払)。

令和6年12月から、従来の健康保険証は新規発行されず、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行しました。マイナ保険証を持っていない人には、資格確認書が交付されます。国保では、資格確認書や資格情報のお知らせを使って、引き続き窓口で保険診療を受けられます。

出典:小平市「国民健康保険の概要」(資格確認書・マイナ保険証)。

小平市の国民健康保険税は、所得割・均等割などの組み合わせで計算します。令和8年度の条例では、次のとおりです。

区分所得割均等割課税限度額
基礎課税額6.32%32,500円67万円
後期高齢者支援金等分2.43%14,500円26万円
介護納付金分1.97%16,200円17万円
子ども・子育て支援納付金分0.3%1,872円(18歳以上は95円を加算)3万円

所得割は、基礎控除後の総所得金額等に乗じます。低所得者には均等割の軽減があり、未就学児や出産被保険者にも減額があります。

所得割の基礎になる総所得金額等は、事業損失の損益通算や、純損失を翌年度以降の所得と相殺する控除を経た後の金額です。損失が所得を上回れば所得割は0になります。ただし、均等割は所得に関係なくかかります。また、前年所得で計算するため、当年の赤字は翌年度の税額に反映されます。

事業損失があるのに高額な国保税が来るのは、前年所得が高い場合や、世帯にほかの加入者の所得がある場合、均等割が残る場合です。所得控除は基礎控除だけなので、所得税・住民税より負担感が大きくなることがあります。

出典:小平市国民健康保険条例(令和8年度)、地方税法第703条の5(所得割の基礎)。

保険税を滞納すると、まず催告があり、それでも納付しない場合は滞納処分(差押さえなど)の対象になります。滞納が続くと、有効期限の短い短期被保険者証や、資格証明書が交付されることがあります。資格証明書は、保険証の代わりに交付される書類で、医療機関の窓口でいったん全額を支払い、あとで国保に請求する形になります。

出典:国民健康保険法第9条(資格証明書)、地方税法(滞納処分)。

小平市の条例では、出産育児一時金は50万円、葬祭費は5万円です。出産育児一時金は、加入者が出産したときに世帯主へ支給されます。葬祭費は、加入者が死亡したときに葬祭を行う人へ支給されます。

出産育児一時金は、国の制度では令和5年4月に42万円から50万円に引き上げられました。小平市は、それに先立つ令和5年1月から46万円に引き上げ、同年4月から50万円にしています。

出産費用も上昇しています。国の調査では、正常分娩の平均出産費用は令和4年度48.2万円、令和5年度50.7万円、令和6年度51万9,805円でした。東京都は令和6年度64万8,309円で、全国平均を大きく上回ります。

小平市の答弁によると、国保加入者の正常分娩の平均出産費用は、令和4年度約59万7千円、令和5年度約66万8千円、令和6年度約67万6千円(12月末まで)です。一時金50万円を上回る自己負担が生じています。

一時金の引き上げが出産費用の上昇に影響しているかは、因果関係を断定できません。ただし、引き上げの時期に出産費用も上がっており、健保連の委員からは「出産育児一時金の引き上げが出産費用の上昇に影響を与えている印象を拭えない」との指摘もあります。

出典:厚生労働省「第201回社会保障審議会医療保険部会」(令和6年度の出産費用)。小平市の答弁は伊藤央「出産育児一時金「増額」の先で起きていること」によります。健保連の指摘は社会保険研究所「令和6年度上半期出産費用は51.8万円」によります。

出典:小平市国民健康保険条例(出産育児一時金・葬祭費)。

交通事故など、第三者の行為によって傷病を受けた場合、国保は医療費を一時的に立て替えます。この場合は、第三者行為による傷病届を国保に提出します。国保は、立て替えた医療費を後で加害者に請求します。

出典:国民健康保険法第64条(第三者行為)。

海外で医療機関を受診したとき、緊急やむを得ない場合などに限り、療養費が支給されることがあります。日本国内の保険診療と比べて、支給額は低くなることが多いです。事前に国保へ相談してください。

出典:国民健康保険法第54条(療養費)、小平市「国民健康保険の概要」。

ジェネリック医薬品とデータヘルス計画

Section titled “ジェネリック医薬品とデータヘルス計画”

ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、特許が切れた先発医薬品と同じ有効成分をもつ薬で、価格が低いことが多いです。小平市は、差額通知を送って普及を促しています。データヘルス計画は、健診・レセプトデータを分析し、生活習慣病の重症化予防などに活かす計画です。

出典:小平市「国民健康保険の概要」(データヘルス計画・ジェネリック医薬品差額通知)。

国民健康保険財政安定化基金は、都道府県が設置する基金です。医療費の急増や保険税の収納不足に備え、市町村は必要に応じて貸付を受けられます。小平市の「国民健康保険事業運営基金」とは別の基金です。

出典:国民健康保険法第81条の2(財政安定化基金)。

療養費は、保険証を使って保険診療を受けられなかったときなどに、いったん全額を支払ったあとで払い戻しを受ける制度です。海外療養費、柔道整復、はり・きゅう、あん摩マッサージ、補装具などの費用が対象になります。申請には、領収書、診療内容の明細、医師の同意書などが必要です。申請から支給までには数か月かかることがあります。

移送費は、医師の指示で転院などをする際に、移動が困難な場合に支給されます。医師の指示書や領収書などが必要です。

対象や必要書類は、小平市「国民健康保険の概要」で確認してください。

出典:国民健康保険法第54条(療養費)、第54条の4(移送費)、小平市「国民健康保険の概要」。

都道府県は、管内市町村の医療費などの見込みから、国や都の公費、前期高齢者交付金などを除いた「納付金総額」を決めます。これを市町村ごとに分けるのが、事業費納付金の算定式です。

市町村の納付金基礎額は、おおむね次の式で計算されます。

市町村の納付金基礎額
= 都全体の納付金総額
×(所得シェア × β/(1+β) + 被保険者数シェア × 1/(1+β))
×(1+α(医療費指数−1))
× 調整係数

βは所得係数で、都の1人当たり所得が全国平均より高いほど大きくなります。αは医療費指数反映係数で、市町村ごとの医療費水準をどの程度反映するかを0〜1で決めます。東京都は、医療費水準の反映を段階的に小さくし、令和12年度までにα=0を目指しています。

この式により、所得の多い市町村と被保険者の多い市町村が、それぞれのシェアに応じて納付金を負担します。医療費水準の差はαで調整されます。

出典:厚生労働省「国民健康保険における納付金及び標準保険料率の算定方法について(ガイドライン)」、東京都「東京都国民健康保険運営方針」。

後期高齢者支援金・介護納付金の算定

Section titled “後期高齢者支援金・介護納付金の算定”

後期高齢者支援金は、75歳以上の後期高齢者医療制度の給付費を、現役世代の医療保険が支える拠出金です。国保の負担分は、都道府県の国保会計がまとめて支払います。市町村は、事業費納付金の一部として負担します。市町村ごとの負担は、所得のシェアと被保険者数のシェアで按分されます。

介護納付金は、40〜64歳の国保加入者(介護保険第2号被保険者)が負担する、介護保険への拠出金です。国保の負担分は、同じく都道府県の国保会計がまとめて支払います。市町村は、事業費納付金の一部として負担します。市町村ごとの負担は、40〜64歳の加入者の所得と人数のシェアで按分されます。

小平市の令和7年度の事業費納付金のうち、後期高齢者支援金等分は約13.7億円、介護納付金分は約4.9億円です。

出典:高齢者の医療の確保に関する法律、介護保険法、国民健康保険法第75条の7、令和7年度小平市国民健康保険事業特別会計決算。

子ども・子育て支援納付金は、令和8年度から国保の保険税に上乗せされた、子ども・子育て支援金の財源です。医療保険の給付とは無関係な少子化対策の費用を、医療保険の保険料で集める仕組みです。

小平市の令和8年度予算では、子ども・子育て支援納付金分は約1億3,000万円(予算書の子ども・子育て支援金見込額は1億3,141万3千円)です。保険税の均等割は1,872円(18歳以上は95円加算)、所得割は0.3%です。

安竹は、令和8年3月26日の本会議で、子ども・子育て支援納付金を「実質的な隠れ増税」と指摘しました。

子ども・子育て支援納付金という実質的な隠れ増税が新設されている点です。…子ども・子育て支援納付金は、医療とは全く無関係な少子化対策の費用に充てられるため、健康保険の趣旨から大きく逸脱することになります。

また、「将来の保険料の担い手を確保するため」という論理を認めれば、道路整備や防衛費など、どのような政策の費用でも国保の保険税として徴収できてしまうと指摘しました。

少子化対策は、医療保険とは切り離して、国費で行うべきだというのが安竹の主張です。

出典:子ども・子育て支援法、小平市国民健康保険条例(令和8年度)、令和8年3月26日 本会議(会議録)。

用語意味
保険者(ほけんしゃ)保険を運営する主体。平成30年度からは都道府県です(小平市の場合は東京都)。
被保険者(ひほけんしゃ)国保に加入している人(国保加入者)。小平市の場合、約3万4千人です。
都道府県単位化平成30年度から、都道府県が国保の運営を担う仕組みです(全国共通)。
事業費納付金市が都道府県へ支払う、医療給付などの原資です(小平市の場合は東京都)。
普通交付金都道府県が市へ渡す、保険給付費の財源です(小平市の場合は東京都)。
調整交付金所得水準などに応じて配分を調整する交付金です(全国共通)。
法定内繰入法律で決まっている、一般会計からの繰り入れです(全国共通)。
法定外繰入(赤字繰入)法律で決まっていない繰り入れ。保険税の不足分です(全国共通)。
保険基盤安定繰入金低所得者の保険税の軽減分を補う繰入金です(全国共通)。
実質収支決算で収入が支出を上回った額です(全国共通)。
繰越金実質収支のうち、翌年度に繰り越すお金です(全国共通)。
事業運営基金市が独自に積み立てる貯金です。税率改定の緩和などに使います(小平市の場合)。
財政安定化基金都道府県が設置した基金です。医療費の急増に備え、市は貸付を受けられます(全国共通)。
国保運営協議会市長の諮問機関です。税率や給付を審議し答申します(全国共通)。小平市では「小平市国民健康保険運営協議会」です。
ペナルティ赤字繰り入れの解消状況に応じ、交付金が増減する仕組みです(小平市の場合は東京都)。
後期高齢者支援金国保が負担する、後期高齢者医療への拠出金です(全国共通)。
介護納付金40〜64歳の加入者分として国保が負担する、介護保険への拠出金です(全国共通)。
子ども・子育て支援納付金令和8年度から加わった、子ども・子育て支援金分の納付金です(全国共通)。
特定健康診査・特定保健指導40〜74歳の加入者を対象にした健診と保健指導です(全国共通)。
データヘルス計画健診とレセプトのデータを分析し、医療費適正化を進める計画です(全国共通)。
ジェネリック医薬品後発医薬品です。差額通知で普及を促しています。

「保険者」の辞書の読みは「ほけんしゃ」です。役所や介護の現場では、「被保険者(ひほけんしゃ)」と混同しないよう、耳で区別するために「ほけんじゃ」と言うことがあります。また、「患者(かんじゃ)」「信者(しんじゃ)」のように、「ん」のあとの「者」を「じゃ」と読む語もあります。これも濁って読む理由のひとつと考えられます。読み方が違うだけで、意味は同じです。

数値と発言は、次の資料と会議録で確認しました。

このページの図(SVG)とチラシ画像は、安竹洋平(小平市議会議員)が作成したものです。図は CC BY-NC-ND 4.0(表示—非営利—改変禁止)の下で利用できます。出典を明記し、非営利の範囲で、改変せずに共有してください。商用利用や改変を希望する場合は、お問い合わせからご連絡ください。本文の文章は、このライセンスの対象ではありません。